不妊治療 (8)体外受精の手順
不妊治療 (8)体外受精の手順
体外受精の手順の概略をご説明します。
実際には、「(7)移植卵数を決めるために」の卵胞刺激法でご説明しましたように、採卵に至るまでの間、卵巣の状態を整えるための準備が必要です。
1) 採卵(さいらん)
排卵日あるいは排卵誘発剤で卵巣を成熟卵胞になるまで刺激後に卵巣から卵子を採取します。同時に精子も採取します(1日目)。
2) 媒精(ばいせい)
採取した卵子に精子をかけます。精子の数が少ない場合や精子の運動量が低い場合には、ガラスのストローに吸い込んだ精子を顕微鏡下で卵子に注入する顕微受精を行います(1日目)。その後、培養します。
3) 受精確認と分割確認
媒精あるいは顕微受精を行った翌日には受精が確認されます(2日目)。さらに1日経過しますと分割卵に成長します(3日目)。
4) 胚移植
分割卵にまで成長した卵子を子宮に移植します(3日目)。
途中、受精しなかったり、分割しない卵子は移植しません。また、余った卵子は−196 ℃の液体窒素のタンク内で凍結保存されます。
5) 尿検査と血液検査
移植2週間後、尿検査で妊娠反応が確認されれば、血液検査で「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」と言うホルモンの定量を行います。これは妊娠中に胎盤で産生されるホルモンです。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)とは
このhCGは着床後、胎盤で産生されます。このホルモンは卵巣にある黄体の分解を防ぎ、黄体からプロゲステロンの産生を維持する役割があります。また、母児免疫寛容へ影響していると考えられています。
プロゲステロンとは
このホルモンは、妊娠以前には排卵後の黄体期(高温期)の維持に関わるホルモンですが、通常2週間ほどでプロゲステロンの産生は終わり、同時に黄体期(高温期)も終わります。
しかし、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の働きにより、卵巣から黄体ホルモン(プロゲステロン)と胎盤で作られるエストラジオールの分泌が高められ、子宮内膜が肥厚して妊娠が維持されます。
6) 超音波検査
尿・血液検査から1週間後に経腟超音波エコーにより胎嚢の位置や数を確認します(移植から3週間後)。
さらに3週間後、超音波検査で胎嚢の中に2mm程の胎児が見られます。心臓の拍動は明瞭には確認できません(移植から6週間後)。
さらに2週間後には、超音波検査で心拍の拍動を確認できるようになります。また、頭と胴体が区別でき、臍帯(臍の緒)と卵黄嚢がみえます。(移植から8週目)。
<上の図の説明>
8週目頃の胎児。右側のリングが卵黄嚢。その左上部が頭、その下が胴体で、周囲の黒い部分が羊水。卵黄嚢と胎児は卵黄管でつながっており、卵黄嚢の中の栄養を取り込んで初期の成長を保ちます。
卵黄嚢の水平位で左側の子宮内膜の胎盤とつながっているように見える部分が臍帯(さいたい)です。