血液検査 (6)LDHとLDHアイソザイムからわかる事
血液検査 (6)LDHとLDHアイソザイムからわかる事
(A) LDHとは
LDHは、Lactate Dehydrogenase:乳酸脱水素酵素の略名で、乳酸とピルビン酸との相互変換を触媒する酵素です。
乳酸は、急激な無酸素運動を行うと筋肉細胞内でエネルギー源として糖が分解されピルビン酸を経て乳酸が蓄積することから、筋肉疲労の原因物質として知られています。
体内に蓄積された乳酸は各組織のLDHにより、ピルビン酸に変換されます。その後、肝臓内で糖新生によってグルコースが再合成され、血中に放出されて赤血球や筋肉で再びエネルギーとして使われます。
LDHは、肝臓や腎臓、心筋、骨格筋、赤血球などに特に多く含まれています。従って、これらの臓器に異常があって細胞が壊されると、細胞内のLDHが血液の中へ流れ出します。その量を測定するのがLDHの検査です。
(B) LDHを調べると何がわかるのか?
LDH は、特に肝臓、腎臓、心筋、骨格筋、赤血球、癌細胞に多く含まれますので、LDH の上昇により、これらの細胞の破壊や増殖が生じている事を知ることができます。
LDHが含まれている上記の組織が壊されると、血液中にLDHが増えます。特に急性肝炎や肝臓がん、あるいは心筋梗塞のときに著しく増加します。
その他、慢性肝炎や肝硬変などの肝臓病、腎不全、悪性貧血などの血液病、筋ジストロフィーなどの骨格筋の病気、間質性肺炎、様々な臓器の癌など、多くの病気で血液中に増加するので、これらの病気を発見するスクリーニング検査として用いられています。
病気の原因である特定の臓器が明らかな場合は、このLDHを以前の状態と比較するだけで病気の進行を把握できます。
しかし、いくつもの臓器で問題があったり、LDH上昇の原因がどこの臓器かが明らかでない場合には、LDHだけで病気を特定できません。そこで、次に述べるLDHアイソザイム検査を行なって詳しく調べていきます。
(C) アイソザイムとは
アイソザイムとは異性酵素と訳されており、生化学的には同一の反応を触媒する酵素ですが、蛋白質の構成成分が異なる酵素を意味し、イソ酵素とも呼ばれています。
アイソザイムは構成する蛋白質が異なる事から、荷電状態(等電点)が異なり、その性質を利用して電気泳動で分けて、どこの臓器のLDHが多いかを知る事ができます。
(D) LDHのアイソザイム
LDHのアイソザイムには、5種類あることが知られています。
LDH1、LDH2は、心筋、赤血球に多い事から、このアイソザイムが増えていれば、悪性貧血、心筋梗塞、溶血性貧血が疑われます。
LDH2及びLDH3は、悪性リンパ腫、白血病、膠原病、筋ジストロフィー、肺癌。
LDH4、LDH5は、肝細胞、骨格筋に特に多く、このアイソザイムが増えていれば肝炎、肝癌、骨格筋の損傷の可能性が考えられます。
このように各アイソザイム濃度が上昇している場合は、それぞれの臓器障害の可能性がありますので、疾患を生じている臓器を絞り込む事ができます。
(E) 異常があったらどうするか?
LDHは肝臓、心臓、肺、腎臓、血液、骨格筋などの病気や、悪性腫瘍で増加します。
LHDに異常が見られたら、次にどの臓器の病気かを知るためにアイソザイム検査が行なわれます。
アイソザイムの検査により、疾患のある臓器が絞り込まれますので、さらに絞り込まれた臓器に対する検査が進められ、詳細な診断と治療が行われます。
患者さんご自身は、自覚症状があれば早期に受診することです。それ以外には、定期的に健康診断を受けて頂いた際、LDHを含めて他の検査データに目をとめ、疑問があれば健診を受けた医療機関あるいはかかりつけ医におたずね下さい。