「神話の国」づくり (11)安全神話の背景
「神話の国」づくり (11)安全神話の背景
(A) 原発安全神話の背景
日本では1965年に商用原子力発電を初めて以来、2011年3月11日の東日本大震災まで、多くの国民は原発の安全神話を受け入れ、電力供給の多くの部分を原子力発電に頼って来ました。
それは1960年頃から、高度経済成長と共に日本の電力需要が高まった時期と一致しています。
そして東日本大震災が発生し、福島第一原発の事故につながるまで、使用済み廃棄物の問題が残されているにも関わらず、「安全神話」を疑うこともなく、取り組まなければならない廃棄物処理の課題にも目を背けてきました。
(B) 当時のヒーロー
1960年代当時、人気を博していたマンガはエイトマン(1963年から)と鉄腕アトム(1951年から)であり、どちらも原子力エネルギーで超人的なパワーを見せつけ、正義感が強く、悪と戦う姿勢が好まれていました。
これらはそれ以前の軍用ロボットとして開発された鉄人28号(1956年から)という、鉄の塊のヒーローに比べ、スマートで子供達のあこがれの的になっていのかも知れません。
また、近年ではネコ型ロボット・ドラえもん(1970年から)も原子力を使って周りの子供達の夢をかなえています。
これらはいずれも子供達の夢のヒーローであると同時に犯罪やいじめから、圧倒的な力で社会正義を実現しました。
まさに原子力の平和利用だったわけです(注釈:当時のこれらの漫画家が、原子力政策に荷担したとは考えていません)。
それまでのヒーローと言えば、牛若丸、鞍馬天狗、赤胴鈴之助など、どちらかと言えば「自然エネルギー派?」のヒーローだったと言えるかも知れませんね。
そう考えますと、今、ドラえもんがなくなったら子供達は残念に思うでしょうね。
(C)課題に目を背け続ける姿勢
大震災と原発の事故後、果たしてこれまで目を背けてきた問題や残されていた課題にどれほど向き合っているのでしょうか?
そして、これらの問題の背景に気が付きながら、仮に原発を利用し続けるなら、後の世代から見たなら、現在の私たち自身は、「安全神話に騙された国民」から「安全神話の継承者」とみなされるのではないでしょうか。