血液検査 (21)魚と肉の飽和脂肪酸
血液検査 (21)魚と肉の飽和脂肪酸
前回、(20)魚と肉の不飽和脂肪酸 について調べました。
人の体内では生合成されない必須脂肪酸は、植物に豊富な不飽和脂肪酸であることをご理解頂けていると思います。
今回は、魚と肉に多く含まれる飽和脂肪酸を比較してみましょう。
(A) 魚の飽和脂肪酸は?
それでは青背魚の飽和脂肪酸はどうでしょうか?
青背魚とは、いわし、さば、あじ、さんま、まぐろ、かつお、ぶり などです。
栄養別食品一覧表の魚類から100グラム当たりの飽和脂肪酸の値を抜粋しました。
以下の青背魚はいずれも不飽和脂肪酸であるDHAとEPAが豊富で動脈硬化や血栓症の予防良いと言われている魚です。
いわし丸干し 1.48グラム
さば開き干し 6.89グラム ・・・・不飽和脂肪酸も多かったですね。
あじ干物 3.23グラム
さんま(生) 4.23グラム
ほんまぐろ赤身 0.25グラム
かつお(秋獲り) 1.5 グラム
ぶり 4.42グラム
魚に関しては、不飽和脂肪酸の多い魚(さば開き干し、さんま生、ぶり)は、飽和脂肪酸も多い傾向が見られます。
(B) 飽和脂肪酸の少ない肉は?
必須脂肪酸が植物性の脂肪酸であることから、脂肪酸は植物由来の脂肪酸(不飽和脂肪酸)が身体に良いことはご理解頂いておられると思います。
従いまして飽和脂肪酸の少ない肉の方が身体によいと考えられます。
そこで「栄養別食品一覧表」で飽和脂肪酸の少ない肉を見てみましょう。
このリンク先の「肉類」の表の下の方を見ていただきますと、肉100グラム当たりの飽和脂肪酸は、次の通りです。
くじら 0.08グラム
鶏肉(ささみ) 0.17グラム
豚肉(ヒレ) 0.56グラム
豚肉(ばら) 12.95グラム ・・・・・不飽和脂肪酸は多かったのですが、飽和脂肪酸も多い。
豚肩ロース 6.00グラム
鶏肉(皮) 16.30グラム ・・・・・不飽和脂肪酸は多かったのですが、飽和脂肪酸も多い。
いずれの青背魚もほとんどがブタのヒレ肉よりも多くの飽和脂肪酸を含んでいます。
また、不飽和脂肪酸の多かった豚(ばら)肉、豚肩ロース、鶏肉(皮)は、いずれも飽和脂肪酸も多いことがわかります。
一方、卵100グラム当たりでは、ではどうでしょうか?
たまご(生) 2.84グラム
たまご(ゆで) 2.70グラム
たまご(卵黄) 9.22グラム ・・・・卵黄は不飽和脂肪酸も多かったですが、飽和脂肪酸も多い。
たまご(卵白) 0.01グラム
<私見>
青背魚にこだわらなくても、鶏肉及び豚肉(ヒレ)なら、飽和脂肪酸は青背魚よりも少ないので、問題なさそうに思えます。
一方、青背魚が良いとする理由は、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が豊富であることが上げられています。
なぜなら、これらが直接、中性脂肪の低下や、血小板凝集の抑制に効果があると考えられているからです。
しかしこれらのEPAやDHAは、αーリノレン酸から生合成されますので、狭義の必須脂肪酸ではありません。
よほど緊急的にEPAやDHAによる血小板の凝集抑制性作用を必要とする患者さん以外では、それほどこだわる理由が理解できません。
アザラシを食用としていたイヌイット達の生活環境では、ブタや鶏を飼育するよりは狩猟としてアザラシを捕獲する生活の方が楽な環境だったのではないでしょうか。
これらのことを考えますと、EPAやDHAに固執してサプリメントで補おうとされるよりは、リノレン酸から生合成されることを期待しても良いのではないでしょうか。
こう考えるなら、青背魚にこだわらず、飽和脂肪の少ない豚肉や鶏肉でも構わないのではないかと考えます。
リノレン酸関連情報