急性心筋梗塞 (5)AED(自動体外式除細動器)の有効性
急性心筋梗塞 (5)AED(自動体外式除細動器)の有効性
AEDとは
AEDとは、 Automated External Defibrillator の略語で、「自動体外式除細動器」といいます。AEDの設置場所を示す目印には、「AED」と書かれた赤いシールが貼られていますので、普段から設置場所を良く見ておきましょう。
携帯型のAEDが作動するとき
AEDは突然心臓が停止した人に対して電気的なショックを与える事により、再び正しいリズムに戻し、蘇生するための治療機器です。
心停止の原因として、心臓の筋肉がけいれんを起こし、心臓から血液が全身に送り出せなくなる危険な不整脈、心室細動や心室頻拍があります。この心室細動に対して電気ショックを与える事から「除細動する」と言います。
心室細動は急性心筋梗塞やボールが強く胸に当たって発症する心臓振盪などのときにみられる非常に危険な不整脈であり、AEDによる治療が可能です。
心室細動以外の心停止の場合には、AEDは有効ではありません。 携帯可能なAEDは、自動的に心室細動か否かの判断を行い、心室細動であればAEDが自動的に動作します。しかし、心室細動でなければ「心臓マッサージの継続」を促す指示があるだけです。携帯型ではないタイプの心電図波形が表示される救急救命室や医療機関で使われているAEDでは、心電図の波形を自分で判断・評価して作動させます。
心停止になったすべての人にAEDは有効か?
心停止により突然倒れた人すべてに対して、必ずしも有効ではありません。AEDが有効に働くのは心室細動による心停止に対してのみです。
しかし、倒れている人が心室細動かどうかはAEDを装着してみないと分かりません。もしAEDが作動しない時にはAEDの指示に従って人工呼吸、心臓マッサージの心肺蘇生を続けて下さい。
AEDの有効性
心室細動発生後1分で除細動しますと生還率は約90%です。2分後の生還率は約80%に減ります。このように心室細動発生から除細動までの時間が1分間遅れるごとに10%ずつ死亡率が上がります。まさに、1分1秒を急がなければならない事態です。目の前にいる心肺停止のヒトに対してAEDが有効かどうかはわかりませんが、使ってみましょう。
救急隊に任せた場合
1)心肺停止で倒れている人を発見してから、119番に電話をして救急要請する(場所と状況、被救護者の状態の伝達)までの時間は2分程かかります。
2)救急要請から救急隊員が到着するまでの平均時間は約6~7分と言われています(場所によってはもっとかかります)。
3)現場に到着した救急隊員がAEDを動作させるまでに1分はかかります。
従って、心室細動発生から救急隊到着までの時間は9分を越えることになり、生還の可能性は10%以下と推定されます。
あなたがAEDを使うために
救急要請から救急隊が到着し、AEDを使うまでの9分後には、救命の可能性は10%程度にまで低下してしまいます。
従って、倒れた人を見かけた「あなたがその場でAEDを用いて除細動」しない限り、その人を助けることはかなり難しいと言えます。
そのためには正しくAEDを使用出来るように、AEDの使い方を知っておく必要がありますので、「AED講習会」を受けて頂くことがよいと思います。
地域の消防署ではAEDの使用方法を含めた心肺蘇生法の講習を行っています。今、あなたの隣にいる人が心停止を起こしたときに適切な対応が出来るように備えるために、講習会に参加しましょう。
私(あなた)がAEDを使うような事はまず無いだろうと、心肺停止を想定外の事としないで下さい。ヒトは必ず心肺停止により最期が訪れるのですから。