ヘモグロビンA1c (6)糖尿病と高血圧の関係
ヘモグロビンA1c (6)糖尿病と高血圧の関係
糖尿病と高血圧の間には一見、何の関係もなさそうに見えます。ところが、糖尿病患者さんの少なくとも半数の方は高血圧も合併しています。どうしてかを一緒に考えてみましょう。
糖尿病になるとなぜ高血圧になりやすいのか?
- 糖尿病患者さんの多くは太っている事が多く、肥満の人の血流量は通常の人より多いので心臓からの心拍量を増やし、勢いよく血液を送り出さなければ全身に血流を送れません。つまり、肥満である事で心拍出力が強いため、血圧が高くなり易いのです。
- 肥満の方は一般的に血液中の脂質も多いので、高脂血症や高コレステロール血症も合併していれば、血液そのものの粘度も高く、血管の中を流動させるには血圧を上げる必要があります。
- 肥満の結果、血管を取り巻く体脂肪が血管を圧迫することで、心臓の負担は大きくなります。
- また肥満の人は交感神経が緊張し、血圧を上げるホルモン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が多く分泌されるので高血圧になりやすいと考えられています。
- 糖尿病は膵臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなるため、その働きを補うためにインスリンを多量に分泌する時期があります。そうなると高インスリン血症となります。この高いインスリン濃度は交感神経を刺激し、心拍出量が増え、血圧が高くなります。
- 高血糖になると血管内の浸透圧が上昇し、細胞内の水分が血液中に移動します。その結果、血液量が増え血圧が上昇します。(糖尿病で、のどが渇きやすいというのは細胞内の水分移動による結果です。)
- 糖尿病が進行すると動脈硬化や腎不全といった合併症が起きる事によりさらに血圧が上昇します。血管が硬くなれば、心臓の拍動をより強くする事になり血圧は上がります。 (腎臓の血管で尿成分を濾過する毛細血管でも動脈硬化が進むと細い血管が切れて、尿に蛋白が出たり、腎臓のろ過機能が低下します。)
これらのような様々な身体の変化が現れることから、糖尿病と高血圧の関連性が指摘されています。
糖尿病は、単に血糖値が高いだけではありません。高血圧や高脂血症の他にも下記に示した「糖尿病の三大合併症」に加えて、心筋梗塞や脳梗塞の準備段階にあるとも言えます。万病の元とまでは言いませんが、是非とも「ヘモグロビンA1cを下げ」、「心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らし」、無駄な医療費を使うことなく、健やかな日々をお過ごしいただきたいと思います。
解説
糖尿病の合併症:毛細血管を中心に生じる微少血管障害と、比較的太い血管に起こる大血管障害に大別することができます。
糖尿病の三大合併症として知られる「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」は、いずれも微少血管障害であり、糖尿病発症後10年前後に出現すると考えられています。
一方、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる動脈硬化は大血管障害にあたり、境界型糖尿病と呼ばれる糖尿病予備軍の段階から発症・進展することがわかっています。
血糖値のコントロール:通常の状態では血糖を下げるインスリンと血糖を上げるグルカゴンの作用によって調節されています。食事後血糖値が上昇すると、グルコースは膵臓のランゲルハンス島β細胞からインスリンが分泌されます。
このインスリンの血糖降下作用は三つの経路によって生じます。
1)インスリンは糖を結合して、肝臓と筋肉組織内に糖を運び込み、グリコーゲン合成を促進する。
2)インスリンは糖を結合して、脂肪組織内に糖を運び込み、グリコーゲン合成と中性脂肪合成を促進する。
3)インスリンは膵α細胞に入って、直接グルカゴンの産生を抑制し、グルカゴンの血糖上昇作用を押さえる。
次回からは、ヘモグロビンA1cから少し離れますが、糖尿病について考えてみましょう。