ヘモグロビンA1c (9)高血糖による変化のメカニズム
ヘモグロビンA1c (9)高血糖による変化のメカニズム
前回、高血糖が継続すると身体には下記のような変化を生じると説明しました。
1)口渇(口・のどがかわく)
2)多飲(水分を多く飲まないといられない)
3)多尿(夜間もよくトイレにいく)
4)全身倦怠感
5)浮腫
6)錯乱状態・けいれんなどが起き、そのまま放置していると昏睡に至る
今回は、上記の症状を生じるメカニズムについてご説明いたします。
高血糖では、なぜ「のどが渇く」のでしょうか。そして、どうして昏睡にまで至るのでしょう?
高血糖による身体の変化はなぜ起こるのか?
血糖値が高い事でどうして上記の状態を引き起こすかについてご説明します。
血糖が高いために、血液(血管内)の浸透圧が上がります。その結果、血液を取り巻く細胞(血管の内皮細胞・壁細胞)内の水は血管内に移動し、細胞は水不足で脱水となります。
脱水の結果、のどが渇くため、脱水を是正しようと水分を多く飲むこととなります。しかし、細胞内の脱水を是正するには、血液の浸透圧を下げるほどの大量の水分が必要ですので、多飲となり、多尿となります。いくら水を飲んでも脱水から抜け出せません。
高血糖の状態でこの脱水症状が長く続くと、末梢の毛細血管は細くて血管内皮細胞の細胞内水分だけでは足りず、血液が凝集し、血液細胞まで脱水となる結果、凝縮し、さらに浸透圧が上昇します。そしてついには、脱水となった毛細血管の損傷を生じます。
身体の毛細血管は、手足の指先だけではありません。目の網膜や腎臓、脳の脳血液関門や末梢神経にもあります。
これらの毛細血管が高血糖のために損傷を受けた結果として、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症などを生じます。また、太い血管でも動脈硬化が進行しますと心筋梗塞、脳梗塞、解離性大動脈瘤などに徐々に進行していく危険性が極めて高いと言えます。
わずかな量のしたたり落ちる水滴も、時間をかけると石に凹みを作り、ついには岩をも通す事があると言われるように、血糖値が少し高いだけでは何の痛みもありません。しかし長い時間をかけて浸透圧により少しずつ末梢の毛細血管の細胞から水分を引き抜き、ついには血管を損傷してしまうのです。
次回は、高血糖で、どうして昏睡にまで至るかを考えてみましょう。