ヘモグロビンA1c (10)高血糖による昏睡はどうして起こるのか?
ヘモグロビンA1c (10)高血糖による昏睡はどうして起こるのか?
前回に引き続き、高血糖による身体の変化についてご説明を続けましょう。
今回は、どうして昏睡にまで至るのか?です。
昏睡に至るメカニズムは、前回までにご説明いたしました身体の変化1)~5)に続いて、吐き気、頻脈、意識障害と共に血液中にはケトン体が増え、血液は酸性に傾きます。(正常では弱塩基性です。)
その原因は、肝臓や筋肉などの全身の臓器や組織内に糖から作られて貯蔵されているエネルギー代謝物が存在しないからです。身体の細胞内に糖エネルギー代謝物質がないため、糖を利用できない代わりに、肝臓や脂肪組織に蓄えられている脂肪がエネルギー源として使われます。
脂肪がエネルギーとして代謝されると、ケトン体という代謝産物が生じます。ケトン体が血液中に増えると血液のpHが酸性に傾きケトアシドーシスという状態になります。この状態が長く続くと、昏睡に陥り、生命にとってはきわめて危険な状態になります。
その理由は、血液が酸性に傾くと酸素を運搬している赤血球が酸素を結合しにくくなるからです。
血液が酸性に傾くと、赤血球中のヘモグロビンのヘムと言う蛋白の酸素結合能が低下する結果、酸素不足の赤血球が全身を循環するため、脳が酸欠となり意識障害が起こると考えられます。
同時に、全身の臓器でも酸素が不足ますので働きが悪くなり、多臓器不全にまで至るでしょう。
糖尿病の「まとめ」
糖尿病は血液中の糖が継続的に高い病気です。
その原因は、膵臓のインスリン不足のため、糖をエネルギー源として身体に蓄積できない結果、高血糖を起こします。
この高血糖は、のどの渇き、脱水による多飲、多尿、毛細血管における血液の凝縮、毛細血管の破壊による末梢神経、腎臓や網膜の合併症、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化の促進。そして脂肪酸の代謝とその結果としてケトン体の産生により、血液が酸性に傾き、赤血球が酸素を結合できなくなりました。そして昏睡にまで至るのが糖尿病です。
まるで「風が吹けば桶屋が儲かる」のような展開でしたね。
まさにわずかな水滴が岩をも通すように、痛くもかゆくもなかった高血糖が続きますと身体のあちこちに障害を来すことをご理解いただけたでしょうか。
糖尿病に関しては、治療法や予防法以外にもまだ、説明したいことはございますが、今回のシリーズはここまでとします。
一緒にヘモグロビンA1cを下げて、糖尿病を防ぎ、合併症のリスクも減らしましょう。