高齢期の意識調査2014 地域医療に貢献する 高齢期の意識調査2014 2014年8月29日、厚生労働省は「平成24年高齢期における社会保障に関する意識等調査結果」を公表しました。 今回は、この調査内容をご一緒に見ていきたいと思います。 (A) 調査対象 タイトルには「高齢期」とございますが、実際の調査対象は20歳以上の約11,000人を対象としており、その年齢分布は上記リンク先の2ページの「8」に示されています。 (B) 老後とは何歳から?(上記リンク先5ページの図2と図3) 何歳ぐらいから老後と考えるかについては、 「70 歳から」が 、 32.0%、 「65 歳から」が、 28.6% と、ほぼ同じ割合になっていました。 この判断基準は、年齢と共に上がる傾向が見られるそうです。 つまり、年齢が上がっても、自分を老人としてあまり意識していないことかも知れません。 元々、「おじいちゃん、おばあちゃん」と言う呼び方は、孫から一世代(親)超えた世代を呼ぶ際の「世代間」の呼び方であり、必ずしも年齢で使い分けているのではないと思います。 若くても「孫」からは「おじいちゃん、おばあいちゃん」と呼ばれるのは仕方がないかも知れません。 (C) 就労希望年齢(上記リンク先7ページズ5) 何歳まで働きたいかについては、 「65 歳まで」とする者が 27.3%、 「60 歳まで」とする者が 19.6%、 「70 歳まで」とする者が 17.6%でした。 また、「生涯働き続けたい」とする者は、 7.7%でした。 その一方で、老後の働き方は、8ページ図6の通り、 「働く日数を減らしたり、時間を短くして働きたい」の割合が 、53.2%、 「老後は働かずに過ごしたい」が 、 27.3%、 「現役世代と同じようにフルタイムで働きたい」とする者は、 5.6% でした。 生活のために働くのであり、面白くて働いているのではないと言うことでしょうか。 (D) 老後の生きがい(12ページの図10) 老後の生活の中で生きがいを感じることは、 「教養・趣味を高めること」が最も多く 46.5%、 「子どもや孫の成長」が 43.0%、 「家族との団らん」が 35.7% でした。 また、性別では 男性は「教養・趣味を高めること」が 46.1%で最も多く、 女性は「子どもや孫の成長」が 46.9%、 また、「教養・趣味を高めること」が 46.8% でした。 どうも男性は自分の事を中心に、女性は家族のことと自分の事を同程度にバランスをとっているように思われます。 この結果は、男性はそれまで仕事中心の競争社会で生活をおくってきたせいかもしれません。 他方、女性は、周囲を気遣うバランス力で家族や地域社会の調整能力が豊であると見ることも出来るのではないでしょうか。 (E) 生活したいと思う場所(16ページの図13) 年をとって「配偶者がいなくなり一人となった場合」にどのような場所で生活したいかについては、 「住み続けた自宅(子どもの家への転居を含む)」が、68.3%、 上の自宅に高齢者住宅を加えると、 75%、 施設入居希望者は、 約13% でした。 配偶者が亡くなられた時に生活したい場所は、図14にございます。 やはり自由でわがままが許されるのは自宅ですね。 長年、背負ってきた住宅ローンから解放され、人生における経済的負担の大半を費やしたと言っても過言ではない「自宅」で自由気ままに暮らしたいと思うのはごく自然なことでしょう。 しかし、配偶者が亡くなることで、先の人生に不安を覚える実態を垣間見ることが出来ます。 つまり、人生を共に歩んできた過程は、決して平坦ではなく、不安や戸惑い、時には忍耐を強いられたり、無力感を感じる時期を励まし合って乗り越えてきた人生における生活の場が自宅であったことを考えれば、それぞれのご自宅がどこよりもも安心できる場所であることは、各々が頑張って耐え抜いてきた人生であったと考えることは出来ないでしょうか。 (F) 介護を必要とする時に生活したい場所(17ページの図15) 年をとって「介護を必要とする場合」にどのような場所で生活したいかについては、 「住み続けた自宅(子どもの家への転居を含む)」 18.7%、 上の自宅に高齢者住宅とグループホームを加えると、 43.1%、 「特別養護老人ホームなどの施設」が 29.8%、 「病院などの医療機関」が 9.2% でした。 自宅で暮らし続けたいと思っていても、いざ、介護が必要になれば介護サービスを受けられる施設で暮らすことで、家族への負担をかけたくないと言う思いであろうと理解されます。 少子化とは別に、確実に「親の面倒は子供が見るもの」との考え方は少数派になっているようです。 (G) 今後増えて欲しい介護サービス(20ページの図21) 「訪問介護・看護サービスを提供する事業所」が最も多く 、 49.1%、 「通い、泊まり、訪問が提供される小規模多機能型居宅介護事業所」が 、 36.5%、 「自宅から通って利用するデイサービスを提供する事業所」が 、 33.3%、 「高齢者のためのサービス付きの住宅」が、 30.9% でした。 出来るだけ家族に負担をかけたくないと思いつつも、やはり自宅でより多くの介護サービスを受けられるなら、生活の中心となる場所は自宅で住み続けたいと言う思いでしょう。 <私見> -近未来予想- さて、上記の厚労省の調査結果をあなたの身の回りの問題としてご一緒に考えてみたいと思います。 現実の少子高齢化と介護関連事業における労働条件の水準の低さは、上の調査結果とは裏腹に、深刻な人手不足となっています。 介護福祉士国家試験合格発表2014 の(B)人口構成の変化に対応できないのでは? で以下のように指摘しました。 「75歳以上の人口は、2015年からの10年間で約500万人も増えます。 しかしながら、介護福祉士は国家試験合格者数から、10年間で4万人程度しか増えません。 現在すでに働いている介護福祉士の退職を考えるなら、実質的な介護福祉士の増数はより少ないことは間違いないでしょう。 現状の施設数と介護職員が増加する500万人の需要に応えて行くことは期待できません。例え需要が10%の50万人であっても、現状でさえ人材確保が難しい状態にあるからです。 つまり、介護保険の需要に対して供給が追いつかない状況が生まれる事を今後の10年の間、実感していくことが予測されます。 2020年の東京オリンピック後になって、巨額を投じたスポーツ施設は出来たけれども、国民にとっては「あとの祭り」だったと言うことにならない事を願うばかりです。 <調査結果から考えるべき事> 今回の調査結果から、 高齢期は出来る限り家族の負担を減らしながら自宅での生活を希望している事がわかります。 しかし、家族の負担が避けられない可能性が高く、 そればかりか高齢者のみの家族構成や高齢の単身者世帯では、孤独死の頻度が上がることは避けられないのかも知れません。 このような状況について、間もなく皆さんの身の回りでも現実となる可能性は否定できません。果たしてどれ程の自治体や自治会が、これらのことを想定し、対応策を議論されているでしょうか。 2014年1月11日の神戸新聞によれば、阪神・淡路大震災の被災者らが入居する公営の「災害復興住宅」では、2013年11月時点の高齢化率(65歳以上)が49・2%に達しています。 また、2014年5月21日の河北新報社の調査では、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県で、災害公営住宅への入居が5月1日までに始まった22市町村の入居者の高齢化率は35.4%に上る事が明らかにされました。 これらの地域や自治体あるいは自治会での対策に、私達がどれだけ関心を払い、支援を継続し、どの様にして高齢の地域住民を守っていくのかを試行錯誤する過程は、一つの貴重なモデルとして見ることが出来ると思います。 あなたのお住まいの自治体や自治会ではどう対応されるのでしょうか。 様々なイベントや一時の祭事には予算も時間もかけている事と思いますが、より対策が求められるこれらのことを後回しにするなら、それこそ「あとの祭り」となるでしょう。 <関連情報> 生活保護に占める高齢者世帯のデータから見えること まとめ ランキングで観る地方自治体 まとめ