イレッサ訴訟
イレッサ訴訟
イレッサとは
イレッサ錠はアストラゼネカ社が製造販売する抗悪性腫瘍剤、ゲフィチニブ製剤の商品名です。
主に肺癌治療薬として用いられていますが、その副作用により死亡した患者の遺族らが国と製薬会社(アストラゼネカ)を相手取って起こした訴訟です。
2011年11月15日、東京高裁(園尾隆司裁判長)は、国とアストラゼネカ社の責任を認めた一審東京地裁判決を取り消し、原告側の請求を棄却し、原告側の逆転敗訴となったが、原告側は上告の方針を示しています。
裁判の争点
副作用で間質性肺炎を発症する危険性の注意喚起が十分だったかどうか。
アストラゼネカ社は2002年7月の輸入承認時、医師向け添付文書で「重大な副作用」欄に間質性肺炎を記載しただけで、致死的な副作用などを記す警告欄や、死亡の可能性があるとの表示もなかった。
間質性肺炎との因果関係
東京高裁の判決の前に、http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=294698&lindID=5 の通り、「慶応大学、肺癌治療薬イレッサが肺線維症副作用を起こす仕組みを解明」-肺癌治療薬イレッサが肺線維症副作用を起こす仕組みを解明し、その治療法を示唆-と言う論文掲載の知らせを示すサイトがあった。
この論文によれば、細胞培養での実験とマウスを使った研究レベルではあるが、イレッサが肺線維症を起こす事を示しているようであるが、その予防薬もある事を明らかにしている。
この細胞レベル及び動物実験のレベルの結果が、直ちに人でも起こりえるかどうかは言及できないものの、可能性としてはイレッサが肺線維症を起こし得ると言う事だろう。
間質性肺炎については、当サイトの http://takamidai-clinic.com/?p=1863 で説明させていただいたので参照して下さい。
また、http://takamidai-clinic.com/?p=562 でも述べましたが、元々の疾患や患者側の要因、使用薬剤による要因の統計学的分析がまったくなされていないのは、今回のイレッサでも同様でした。
クリニックから
この裁判の結果について医療者の立場で申し上げる事はございません。
ただ、裁判以前に、イレッサの因果関係についての解析がまったく出来ていない事を腹立たしく思うばかりです。
しかし、イレッサのようなお薬でなくても「そんな副作用のある薬を処方したなんて聞いていない。」とか。
「(薬剤によっては)脳障害になったらどうしてくれるんだ。」と言って来られる患者さんもいらっしゃいます。
しかしながら、どこの病医院であっても
基本的に副作用のないお薬はございません。
病気を放置してさらに取り返しの付かない状況を避けるためにやむを得ず処方しています。
それほど差し迫った状況である時、もし医師から「私もこんな副作用があって不安ですけど、治療を受けますか?」などと言う事は言いません。
ハッキリ申し上げますと、「副作用があって困ると言われますと、残念ですがどのような治療も出来ません。」とお答えするしかありません。
そしてお薬の選択にあたって、肺ガンのような差し迫った場合、ローリスク・ローリターンのお薬では意味が無く、ハイリスク・ハイリターンのお薬を選択せざるを得ない状況にあるのではないでしょうか。
薬害を防ぐためのデータ解析や副作用のより少ない新薬の開発は重要です。他方、わずかなリスクをも避けようとするなら、重い病気になった場合、手術も投薬も受けないという覚悟が求められる事になるのではないでしょうか。
どの当たりまでのリスクを取られるについて、患者さん一人一人に判断をゆだねても、多くの場合、判断に困るのではないでしょうか。