発熱 (3)解熱剤が効く理由
発熱 (3)解熱剤が効く理由
解熱剤には様々な種類がございますが、ここでは一般的によく知られているアスピリンの解熱効果の仕組みについてご説明します。
(A) アスピリンの用途
アスピリンは、関節炎、痛風、腎結石、尿路結石、片頭痛、さらに、手術後や外傷、生理痛、歯痛、腰痛、筋肉痛、神経痛などの鎮痛目的で使用されてきました。
他にも、抗血小板薬として使用されることもあります。
その化学構造は以下の通りです。
(B) アスピリンの作用機序
アスピリンの解熱作用は、アスピリンが体温調節中枢に直接作用するのではありません。
アスピリンは、血管内皮細胞で産生されるプロスタグランジンの産生を直接阻害します。
前回の (2)感染による発熱の仕組み でご説明したように、発熱の機序は(下図参照)、末梢の感染部位で産生されたサイトカインが、脳の血管内皮細胞に作用すると、血管内皮細胞はプロスタグランジンを産生します。
このプロスタグランジンが体温調節中枢を刺激して発熱を生じるとご説明しました。
この時、血管内皮細胞はシクロオキシゲナーゼと言う酵素が活性化されてプロスタグランジンの合成が促進されます。
このプロスタグランジンを合成する酵素(シクロオキシゲナーゼ)に対してアスピリンが(アセチル化して)酵素活性を阻害します。
その結果、(図には示されていませんが、)血管内皮細胞ではプロスタグランジンが産生されないため、体温調節中枢への刺激が抑制され、解熱します。
この「プロスタグランジンの発見とアスピリンの抗炎症作用のメカニズム」を発見したイギリスの薬理学者ジョン・ベインは、1982年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。