発熱 (4)痛み物質とは
発熱 (4)痛み物質とは
(A) 痛みの分類(神経学的)
「痛み」は、次のように3種類に分類されています。
- 体性痛:皮膚、骨、関節、筋肉に対して、切る、刺すなどの機械的刺激が原因の痛み。
- 内臓痛:食道、胃、小腸、大腸などの管腔臓器の炎症や閉塞。肝臓や腎臓、膵臓などの炎症や腫瘍による圧迫が原因の痛み。
- 神経障害痛:末梢、中枢神経の損傷に伴う痛み。
ここでは、感染による炎症の痛み(内臓痛)に限定して話を進めます。
(B) 内臓痛の痛みの機序
内臓痛の痛みが起こるメカニズムは単純です。
それは「痛み物質であるプロスタグランジン」が生成されるために起こるからです。
従って、この痛み物質の生成を阻害することができれば、痛みを抑えることができます。
感染症により炎症が起こると感染部位で痛みが誘発されますが、この炎症部位で放出される物質がプロスタグランジンです。プロスタグランジンの作用によって痛みが増大されます。
また、風邪の時など脳で作られたプロスタグランジンが体温中枢に作用すると、身体の熱を上げるように働きます。
詳しい発熱の機序は、(2)感染による発熱の仕組み を参照して下さい。
つまり、プロスタグランジンによって感染局所の痛みが発生と、脳の体温中枢に作用すると体温上昇が起こります。
(C) 鎮痛の機序
組織が損傷を受けた時、細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わります。
そしてこのアラキドン酸がシクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によってプロスタグランジンが生成されます。
このプロスタグランジンの作用によって引き起こされる「痛み、熱、腫れ」などの症状が引き起こされる現象を炎症といいます。
プロスタグランジンを阻害すれば痛みを抑えたり、体温を下げたりすることが可能になります。
このプロスタグランジンの合成は、(3)解熱剤が効く理由の「(B) アスピリンの作用機序 」でご説明したようにプロスタグランジン合成に関わる酵素であるシクロオキシゲナーゼを阻害する事で鎮痛と解熱の効果が期待できます。
従って、解熱、鎮痛にはアスピリン以外でもプロスタグランジン合成を阻害する薬剤(インドメタシン、イブリーフ、インダシン、ボルタレン、他)であれば効果が期待できます。