肺炎(4) 二つの肺炎球菌ワクチンの違い
肺炎(4) 二つの肺炎球菌ワクチンの違い
二つの肺炎球菌ワクチンの違い
成人用及び小児用肺炎球菌ワクチンの違いについてご説明いたします。下の表のような違いがございます(2013年11月1日からプレベナー13の接種が開始され、プレベナー7は廃止されます)。
成人用肺炎球菌ワクチン | 2013年11月からの小児用肺炎球菌ワクチン | 2013年10月までの小児用肺炎球菌ワクチン | |
ワクチン名 | ニューモバックスNP | プレベナー13 | プレベナー7 |
接種目的 | 肺炎球菌の感染予防 | 髄膜炎・敗血症・中耳炎の予防 | 髄膜炎・敗血症・中耳炎の予防 |
接種対象 | 2 歳以上で肺炎球菌により重症化しやすい人(高齢者等) | 初回接種は2ヶ月~7ヶ月 | 2 カ月齢以上 9 歳以下 |
製剤基準名 | 23価肺炎球菌ワクチン | 沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン | 沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン |
販売会社 | MSD株式会社 | ファイザー | ファイザー |
剤形 | バイアル | シリンジ | シリンジ |
性状 | 無色澄明な水性注射剤 | 振り混ぜるとき均等に白濁する液剤 | 不溶性で、振り混ぜると均等に白濁する乳剤 |
接種回数 | 1回接種。基礎疾患や慢性呼吸器疾患のある方は、5年毎の追加接種。 | 通常4回接種。但し、初回接種月齢・年齢で回数は異なる。 | 通常4回接種。但し、初回接種月齢・年齢で回数は異なる。 |
(接種回数欄に誤りがございましたので、訂正させていただきました。2013年9月18日)
成人用のワクチン(ニューモバックス)を2歳未満に投与してもほとんど効果がありません。その理由は免疫反応がまだ未熟だからです。副作用についても問題はないようです。
小児用ワクチン(プレベナー)は、ニューモバックスと同じ多糖体抗原に、蛋白質を結合させ更に金属のアジュバントを添加した改良型で、抗原として認識されやすくしたものです。
<用語説明>
アジュバント
抗原性補強剤とも呼ばれ、抗原と一緒に注射し、その抗原性を増強するために用いる試薬。
作用機構は様々で不明なものも多いが、抗原を不溶化することで接種組織に長くとどめ、抗原を徐々に長期間遊離させることで投与局所に炎症を起こし、マクロファージが集まり抗原が貪食(食作用)されやすくなり、免疫応答に必要な抗原提示が効果的に行われる。その結果、投与局所のT細胞やB細胞の活性化を増強することで抗体の産生や免疫記憶細胞が誘導されます。
解説
上記ワクチンの場合、多糖体抗原であるニューモバックスは、免疫応答の完成した成人に対しては、一回投与により抗体の産生が誘導されますが、2歳以下の小児に投与しても免疫応答が完成されておらず、抗体がほとんど産生されません。
他方、小児用の肺炎球菌ワクチンであるプレベナーは、多糖体抗原にアジュバントを結合させることで抗原情報を継続的にマクロファージからT細胞に提示できます。さらに繰り返し接種する事でさらにIgG抗体の産生を促しています。
以上で、肺炎のシリーズを終了させていただきます。