発熱 (7)温熱療法
発熱 (7)温熱療法
熱を利用する治療法もございますので、この機会に簡単に触れておきたいと思います。
温熱療法
ハイパーサーミア(温熱療法)は、炎症や癒着などの病変部位を40~43℃に加温することによって薬の効果を高めたり疼痛緩和などを目的として利用されてきました。
ヒトの身体を構成している細胞は、人工的に熱を加えた場合、42.5℃を過ぎると、急激に死滅します。この高温にさらすことによって細胞が死滅する性質を利用し、癌細胞を攻撃しようというのが、ハイパーサーミア(温熱療法)の考え方です。
正常な細胞を壊さずに癌細胞だけ攻撃できるの?
癌細胞は正常な細胞より栄養要求が高く、代謝も活発です。
この性質を利用し、正常な細胞よりも癌細胞の方が温まり易い事から、体温の上昇に伴ってがん細胞が代謝回転の限界を超えるため正常な細胞よりも熱に弱い性質があります。
正常な細胞と癌細胞を同じ温度で温めると、癌細胞は正常な細胞に比べて、1~2℃高くなるために、その温度を利用することで正常な組織を破壊することなく、癌細胞を死滅させることができます。
その理由は、身体は体温を調節し、一定に保つ働きがありますが、発熱に伴い血管が広がりることで血流が増えます。その結果、熱が体外に放出されるので、体温を一定に保つことができます。
ところが、勢い良く増殖する癌細胞は栄養要求が高いため、癌細胞に集まる血管の血流が増えると、正常な細胞に比べてより多くの血流が滞ることで熱をがん細胞の外に放出することが出来にくいからです。
結果的に癌細胞内には熱がこもってしまい、周りの組織に比べて、温度が高くなります。
こうした癌細胞の性質を利用して、癌の温熱療法(ハイパーサーミア)が行われます。
このような温熱療法には、ラジオ波やマイクロ波を使った治療法も含まれます。
そして、抗ガン剤の副作用で体力を消耗した患者さんにも症例によってですが、適応されます。
<私見> −発熱は無駄ではない−
まだ科学的に証明されていませんが、風邪を引いた際に、体温が高くなる人ほどガンになりにくいと言われています。
その根拠として、
1) 白血球が多いことと、
2) 発熱により少量のがん細胞が死滅しているのではないかと考えられています。
こんなことから、少しの熱で急いで解熱するよりも感染症と戦っている白血球と発熱する身体は、病原体だけでなくまだ発症していないがん細胞をも死滅させているかも知れません。
発熱は身体を守るための反応であり、決して無駄ではないかも知れません。
温熱療法に関心のある方は、日本ハイパーサーミア学会のQ & A温熱療法をご参照下さい。