医者を青くするもの (6)渋柿と甘柿
医者を青くするもの (6)渋柿と甘柿 −渋味の正体は?−
甘柿は、成熟すると樹上で果実の渋が抜けますが、
渋柿は、完全に軟化するまで渋いままです。
渋さの原因や渋味の用途などについて調べてみました。
(A) 渋味の成分
「渋味」の成分はタンニンです。
タンニンは植物の葉などに含まれるポリフェノールの総称で、皮をなめし(tanning)て革にするのに使われたことからタンニンと呼ばれていますが、化学的な名称ではありません。
タンニンは柿渋や栗の渋などの渋い(苦い)成分で、多くの植物の葉などに含まれ、葉が動物に食べられのを防いでいます。
このタンニンはタンパク質に結合して収れんするので渋く感じるのですが、皮のなめしでは、硬化や腐敗に関連するタンパク質を除くのに使われるわけです。また、お酒の濁りの原因であるタンパク質を除くのにも使われます。
タンニンは大きく2つに分けられています。
(1)加水分解性のタンニン:酸などに加水分解されるタンニンで、渋い。
(2)縮合型タンニン:加水分解されないタンニンは渋くありません。
縮合型タンニンはフラボノイドがいくつも結合したポリマーです。
柿の渋さは、食べて唾液に溶けることから加水分解性のタンニンであることが解ります。
この渋味が以下の方法で唾液には溶けない縮合性タンニンに変化することで渋味を感じなくなります。
(B) 渋柿を甘くするアルコールの作用
渋柿に含まれるタンニンにアルコール(焼酎など)を作用させると、下記の果肉細胞内に含まれるアルコール脱水素酵素が作用し、アルコールをアセトアルデヒドに変えます。
このアセトアルデヒドが柿のタンニンに結合し、難溶性のタンニン(縮合性タンニン)に変化させることで、渋味を感じなくなります。
他にも加水分解性のタンニンを縮合性のタンニンに変える方法があります。
例えば、人工脱渋法には炭酸ガス法、湯抜法(柿を温める)、アルコール法、干し柿法などがあります。
(C) タンニンの多様な用途と作用
柿に含まれる渋味のある縮合性のタンニンは、渋いばかりの邪魔者でしかありませんが、この縮合性のタンニンは以外にもよく利用されています。
例えば、防水加工、漆器製造工程で漆の下地として炭と混ぜて塗られたり、漁網の強度向上のための網染め染料、酒づくりの際の酒袋の補強、染色材としての利用や、うちわ・和傘、船の船底に塗られる防錆剤として、和紙の強化、家屋の柱に塗るなどで利用されてきました。
また、渋柿ばかりでなく、赤ワインの渋み・栗の実の渋皮なども種子を外敵から守っています。タンニンが渋味を感じるのは、水溶性のタンニンが唾液に溶け、口腔内の蛋白質で出来た粘膜を収縮させる事を利用して次ように利用されています。
下痢止め、整調作用:タンニンの収縮作用は消化管粘膜からの分泌を抑える働きがあるので、内服することによって止瀉作用や整腸作用として利用されてきました。ゲンノショウコにも含まれています。
化粧品として:タンニンを肌に作用させることで、肌の蛋白質を縮め、引き締めるという意味で、開いた毛穴や皮脂腺などを引き締めるのに効果的です。
化粧品に配合することで肌を引き締め、毛穴を目立ちにくくする効果や制汗効果を発揮します。
抗酸化作用:メラニンを産生する細胞の増殖を抑制することで、皮膚保護作用や美白作用が知られていますが、他にもタンニンの抗酸化作用によりシミが出来るのを防ぐ作用もあります。
また、脂肪の酸化を防ぐことで動脈硬化及びその結果としての高血圧などの生活習慣病の予防にも役立ちます。
ここに目を付けた柿渋石けんなどもございますが、効果の程はわかりません。
いずれにしても、上記の効果を自家製造して利用すれば、青くなるのは医者だけではなさそうですね。
<私見>
柿は渋ければ、下痢止め、整腸作用があり、
干し柿にすればLDLコレステロールを下げられます。・・・・(5)柿の実
他にも、抗酸化作用 ・・・・(4)柿の皮
制汗効果 など様々な作用がございますので、上手に利用しましょう。