おしゃれとリスク (2)ネイルアート 地域医療に貢献する おしゃれとリスク (2)ネイルアート 少し前、ちょっと本格的なネイルアートはネイルサロンで行われていました。 今は自宅で手軽に行える「セルフネイル」用のキットが普及し、ネイルアートをより気軽に楽しめるようになりました。 今やあまりに馴染みがあるため、健康への影響について考えること自体がないように思います。しかしネイル人口が増えるにつれて、トラブルも増加しています。 (A) ネイルアートの方法 大きく4種類あります。いずれも自爪(じづめ)に人工物をくっつけるという方法です。 カラーリング:自爪に好きな色を塗る一番シンプルな方法です。生活していると数日で自然に剥がれ始めるので、爪にとっては負担が少ない方法です。 ネイルチップ:接着剤やテープを使って、自爪にプラスチックの人工爪をのせる方法です。外したいときにすぐに自分で外せるので、カラーリングと同様に、爪の衛生には影響が少ないと言えます。 ジェルネイル:自爪にジェル状の樹脂をのせて紫外線ライトで固めて作る人工爪です。 スカルプチュア:自爪に液状の特殊素材をのせて作る人工爪です。持ちが一番良いと言われます。 (B) ネイルアートとアレルギー 接触性皮膚炎 人工爪やその固定材料による皮膚のアレルギー反応です。人工爪の周囲の皮膚が赤くなり、痒みや腫れを伴います。 ネイルが原因かもしれないと思ったら、人工爪を外して皮膚科を受診しましょう。 ネイルの特定材料に反応している場合、以降はその素材を避けるのが無難です。 (C) ネイルアートと感染症 ネイルサロンで施術しても、数週間で自爪と人工爪の間には隙間ができてしまうと言われます。 ネイルアートによる感染症の多くは、この隙間に微生物が繁殖することが原因です。 1. グリーンネイル症候群 ネイルアートが引き起こす代表的な感染症です。緑膿菌による感染症で自爪が緑色に変色します。緑膿菌は水回りにいるありふれた細菌です。爪の変色以外には痛みやかゆみ等の症状はないため、人工爪を外した時にしか気づくことができません。 2. 爪水虫 カビ(白癬菌)による爪の感染症です。爪の一部が白色や黄色に変色し、厚みが増してデコボコになります。 人体で通気が悪く、湿度の高い部位といえば靴を履いた足に出来やすい「足の水虫」が有名です。ネイルアートはこれと同じように、カビの好む環境を爪周囲に作り出します。足の水虫と違う点は痒みなどの自覚症状が少なく、気づきにくいことです。 3. せつ症 2000年にカリフォルニア州のとあるネイルサロンで、施術を受けたお客さん110名が発症し世界的に話題になりました。 調査の結果、ペディキュア用のフットバス全てが、マイコバクテリウムという細菌に汚染されていたことが原因と分かりました。主な症状は、下肢にせつ(おでき)が複数できるというものでした。 (D) ネイルアートによる感染症の予防と早期発見のためにできること いづれの感染症も発見したらネイルアートは中断して、皮膚科で治療をうけましょう。 感染症の早期発見や予防のために、2-3週おきに人工爪を外して数日間は爪の通気をすること、その際に自爪や周囲の皮膚の様子をよく観察しましょう。 また人工爪をつけている間も、普段と同様に手洗いはしっかり行いましょう。人工爪が剥がれるのを気にして手洗いを避ける人がいますが、不衛生になり感染症を助長します。 手洗いのあとには水分が残らないように、しっかり拭き取ることも大切です。