医者を青くするもの (13)ニンニク2
医者を青くするもの (13)ニンニク2 ー抗菌活性と抗腫瘍活性−
前回の「(12)ニンニク1 −エレファントニンニク−」で、下記のタイトルにあるエレファントニンニクについてご説明させて頂きましたので、今回は早速、下記報告の内容をご紹介します。
タイトル:Antibacterial Activity of Elephant Garlic and Its Effect against U2OS Human Osteosarcoma Cells.
訳:「エレファントニンニクの抗菌活性とU2OSヒト骨肉腫細胞に対する効果」
研究者:Huang Z, Ren J.
研究機関:Beijing Forestry University, China.(北京林業大学)
公表雑誌:Iran J Basic Med Sci. 2013 Oct;16(10):1088-94.
(A) 材料と方法 エレファントニンニクからエキスの抽出
ニンニク汁を調製するために、ニンニを電気グラインダーで粉砕し、抽出物を綿の布を通してデカントした。
デカンテーションとは、沈殿を含む液体を放置して固形物を沈殿させたのち、容器を静かに傾けて上澄みだけを流し取る操作です。
ワインを開栓後いったん別の容器に移し替える時にも「デカントする」と言います。
この時のデカントの目的は、
1.ワインのオリを取り除く。
ワインの底にたまったオリは自然の成分で品質が低下したからではありませんが、口に入ると苦味が強かったりするので静かに移し変えて取り除きます。
2.ワインの味わいをまろやかにし、香りを立たせる。
特に若いワインで硬さを感じさせる場合、飲む1時間程度前に栓を抜いておくほうが良い場合もあるようです。
(B) 抗菌活性の結果
下の表1の最左列に示した細菌を培養するシャーレに、エレファントニンニクのエキスをろ紙にしみ込ませた直径6㎜のディスクをおいて、細菌の増殖が阻害される直径を計測した。
この抗菌活性の測定方法は、「医者を青くするもの (9)ニラ1 -検討方法-」で図を使って説明していますので、参照して下さい。
表1の最も右の列は抗菌活性の陽性コントロールとして抗生物質であるアンピシリンの阻害範囲を示し、その左側の saline は生理食塩水をしみ込ませた陰性コントロールです。
その結果、表1の右列に示した抗生物質であるアンピシリンに比べて、右から3列目のエレファントニンニクの抗菌活性は、上から大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌属( S. aureus)、枯草菌(B. subtilis)、バチルス・チューリンゲンシス(B. thuringiensis)、A. violaceus と放線菌(A. aureus)、A. cyanogriseus に対して同等以上の抗菌活性が示された。
また、右から4列目のgaric(通常のニンニク)でも類似の抗菌活性が認められました。
表1.エレファントニンニクの阻害ゾーン(下の表をクリックすると別ウインドウに大きく表示されます)
(C) ヒト骨肉腫細胞の増殖に対する影響
エレファントニンニクのエキスをヒト骨肉腫細胞(U2OS)を培養する培養液に加えて、骨肉腫細胞の生存率を調べた。
その結果を下の図2に示しています。
この図2の右側の Cell viability(%) は、骨肉腫細胞の生存率を示しており、横軸のContは、control(対象、エキスがゼロの時)を示しており、Cont(コントロール)では、エキスを添加していませんので、生存率が100%であることを意味します。
次に横軸の0.1~10は、培養液に添加したエキスの濃度を示しています。
この図から明らかなように、エレファントニンニクエキスの濃度が増加するに従い、骨肉腫細胞の生存率が低下しており、エキスを1%添加したときの生存率は、ほぼ50%程度であることがわかります。
図2 エレファントニンニクのエキスの骨肉主細胞の増殖に及ぼす影響