生ワクチンと不活化ワクチン (1)効果の違いはどこにあるのか?
生ワクチンと不活化ワクチン (1)違いはどこにあるのか?
上記タイトルについて、以下に述べる内容は、あくまでも一般的な免疫学的な観点による見解であることをお断りしておきます。
昨2011年12月15日から、神奈川県が独自で輸入する不活性ポリオワクチンを県民に接種すると言う決定に対して、この場で賛否を述べてたり、生ワクチンの有効性を強調したり、あるいは不活化ワクチンの使用に対して批判を示唆させるつもりはなく、あくまでもワクチン全体についての免疫学的一般論であることをお断りさせていただきます。
その上で、一般の方に対して生ワクチンと不活化ワクチンの違いをご理解頂いた上で、よりよいワクチンについて最新のワクチン開発の状況についても情報を提供させていただきたいと考えます。
生ワクチンと不活化ワクチンの違いはどこにあるのか? これを簡単にご説明しますと、
生ワクチンの接種により、細胞性免疫と液性免疫との両方が誘導されるのに対して、
不活化ワクチンの接種では、液性免疫のみが誘導されます。と言う事になります。
もう少し生ワクチンと不活化ワクチン、及び細胞性免疫と液性免疫についてわかりやすくご説明いたしましょう。
生ワクチン
生ワクチンは、弱毒化されてはいるものの生きた病原微生物ですので、体内で弱い感染状態が成立します。
この時、感染細胞を見つけ出して排除する仕組みが細胞性免疫です。同時に生ワクチンは、生体にとって異物ですから液性免疫も誘導されます。
細胞性免疫と液性免疫
感染症にかかった人の体内では、ウイルス・細菌・寄生虫などの病原体を排除するための免疫システムが細胞性免疫で、特定の病原体を攻撃する事からキラーT細胞(病原体を殺す、破壊する機能のあるT細胞)が作られる事を意味しています。すなわち病原体である抗原に対して特異的に攻撃できる免疫細胞が出来ることから細胞性免疫と言っています。
また感染した場合には、免疫細胞が出来るのと同時に、病原体に対して特異的に反応する抗体も産生されます。抗体は血液中に溶けて存在する事から液性免疫と言います。
従って、生ワクチンの接種により、細胞性免疫が誘導されるというのは、生ワクチンに含まれる病原性微生物に弱く感染させることで、ワクチンに含まれる病原性微生物に対して特異的に反応する細胞障害性T細胞(CD8陽性T細胞)が誘導される事を意味しています。
不活化ワクチン
病原体を薬剤で処理し、増殖しない様にした「不活化ワクチン」、あるいは病原体の成分だけを使った「成分ワクチン」など抗体を誘導するワクチンを不活化ワクチンと言っています。
不活化ワクチンは、異物として認識されるのみで感染はしませんので、感染細胞が出来ないため、細胞性免疫は誘導されず、抗体が産生される液性免疫のみが誘導されます。
次回は、生ワクチンと不活化ワクチンの効果の違いとリスクについてご説明させて頂きます。