生ワクチンと不活化ワクチン (5)新しいリポソームワクチンでヒトの免疫細胞の反応を検証するには
生ワクチンと不活化ワクチン(5)新しいリポソームワクチンでヒトの免疫細胞の反応を検証するには
それでは次に、抗原物質をリポソーム表面に結合させ、内水相にDNAワクチンを導入したワクチンをヒトの免疫細胞が反応して、目的の細胞性免疫や液性免疫が誘導されるかどうかを検証する方法について述べてみたいと思います。
試作品のリポソームワクチンの効果は、通常、マウスを使った動物実験でまず検討されます。そこで効果が認められた際には、別な動物でも検討していくことは可能ですが、動物種により免疫応答の違いがあり、いくら動物実験を繰り返しても、人に対して適応できるかどうかはわかりません。
いつかは、ヒトでリポソームワクチンの効果を調べることが必要になります。その際、使われている方法がヒトの疫細胞をマウスの体内に移植したヒト化マウスを使う方法です。
1.ヒト化マウスとは何でしょうか?
ヒトの免疫系を、マウスの体の中で再現するために作成されたマウスを「ヒト化マウス」と呼びます。
血液/免疫系だけがヒト化されてますので、正確には「免疫系ヒト化マウス」と呼びます。
新しいリポソームワクチンは、ヒトに対して効果を確認する実験は出来ませんので、マウスの体でヒトの免疫系を再現した「ヒト化マウス」を用いることによって、人体で起こっている病気の原因や治療法の検討を行う事が出来ます。
2.ヒト化マウスの作り方
a) ヒト臍帯血から造血幹細胞(血液細胞の元になる細胞)を分離します。
b) ヒトの臍帯血を免疫不全マウスに注射します。免疫不全マウスはヒトの細胞に対する拒絶反応を示しません。
c) マウスの免疫系の全てがヒトの免疫細胞で構成されるようになります。
3.ヒト化マウスでのワクチンの検定
新しいリポソームワクチンをヒト化マウスに投与して、細胞性免疫と液性免疫が成立するかどうかを検証したり、副作用を発症しないかどうかを調べる事が出来ます。
このような方法で、リポソームワクチンの効果の検証が進められています。このようなリポソームを使う方法で、病原体成分のみを用いて液性免疫と細胞性免疫の療法を誘導できる安全で有効なワクチンが一日も早く出来ることを願っています。従来の不活化ワクチンの良いところと、生ワクチンの良いところを併せ持ち、生ワクチンの危険性を回避できる有効なワクチンが使えるようになると良いですね!