前立腺 (9)前立腺肥大症の治療
前立腺肥大症の治療では、日常生活上、困っていなければ治療の必要はありません。すなわち治療しないで経過を観察するのも選択肢のひとつです。
(A) 手術
手術には2つの方法があります。
(1)下腹部を切開して腫大した前立腺腺腫を摘出する開腹手術 ・・・肥大が大きい場合。
(2)尿道から内視鏡を挿入して前立腺腺腫を切除する内視鏡手術。
前立腺肥大症のために、繰り返す尿閉、膀胱結石の形成、出血を繰り返す、治療困難な尿路感染、腎機能障害のいずれかを認める場合は上記(1)又は(2)の手術が勧められます。
また、(2)には内視鏡でレーザー手術も行えます。
レーザー手術には、レーザー照射により前立腺腺腫を凝固壊死させる方法と、レーザーを用いて前立腺腺腫を摘出する方法とがあります。いずれも内視鏡で行います。
凝固あるいは蒸散させる方法では、出血が少なく入院期間が短いという利点はありますが、大きな前立腺腺腫には不向きです。
(B) 薬物療法
薬物療法には、主に次の4つの方法がございます。
(1) 前立腺部の尿道の圧迫を緩(ゆる)める作用をもったα1ブロッカー
(2) 腫大した前立腺を縮小させるアンチアンドロゲン薬
(3) 5α還元酵素阻害薬。
(4) 植物製剤、漢方薬があります。
(1)のα1ブロッカーは降圧薬として使われていた薬剤から開発され、効果がすみやかに現れますが、立ちくらみ、射精障害などの副作用があります。
(2)のアンチアンドロゲン薬は効果発現までに1〜2カ月かかります。男性ホルモン値を若干低下させる作用があり、勃起不全の副作用があります。
(3)の5α還元酵素阻害薬は男性ホルモンの活性化を阻害する薬剤で、性欲減少、勃起障害の副作用がありまが、安全性の高い薬剤です。
(4)植物製剤、漢方薬の切れ味は今ひとつですが、副作用の心配はほとんどありません。
(C) その他の治療法
a) 尿道ステント
心臓や肺の合併症のため麻酔をかけることが危険な患者さんのために、狭くなっている前立腺部の尿道に筒状の形状記憶合金のメッシュ(ステント)を置いて、尿の通り道を確保する方法です。簡単に留置できますが、結石の形成、感染、出血などの合併症を伴うことがあります。
b) 導尿(どうにょう)
尿閉となって手術を勧められたが、どうしても手術は避けたいと言う方や、手術が危険で不可能という場合には、やむを得ずカテーテルという管を尿道から膀胱に通します。
常時カテーテルを留置する方法と、間欠的自己導尿(かんけつてきじこどうにょう)といって尿意をもよおした時に自分で(あるいは介護者により)管を通して導尿する方法とがあります。