医療格差
医療格差
医療格差と言うと経済格差によるものと地域格差が上げられる。
ある意味においては、お金のある人が高価なバックや時計あるいは自動車を買うように、受ける医療においてもある程度の格差は存在すると思いますが、だからといって特別な人しか受けられない医療というのはそれほど多くはないように感じています。
さて、リーマンショック以前のアメリカ社会では、自己破産の半分が高額な医療費の支払に追い込まれていました。そのようなアメリカ社会に比べれば、日本の医療は、格差はあると言っても高額収入の方は高い保険料を支払っていますし、保険料の半額を会社も負担していますので、社会全体として今の保険制度は辛うじて保たれているかのようにも見えます。
それに比べると医療における地域格差の方が問題が少なくないと思います。極端な例になりますが、財政破綻した夕張市の医療は極めて深刻です。http://www.youtube.com/watch?v=BAnfh2-SwjU
これまでにも夕張市立診療所の村上医師が救急搬送を拒否した報道がありました。しかし、医師一人の診療所で24時間態勢の患者の受け入れは、誰がやっても続くものではありません。
医師であるからこそ受け入れて欲しいと期待する地元自治体や地域住民の気持ちは理解できますが、医師を含む医療スタッフや医療設備の確保など、財政破綻した夕張市には出来ない状況の中、赴任した一人の医師に対して24時間働けと言う事の方があまりに非常識だと考えます。
例えどんな医師でも毎日24時間働くような場合、医師の労働条件についてどのように考えているのでしょうか。そんなことを言われれば、誰一人、夕張市で働こうという医療スタッフはいなくなるでしょう。そればかりか、自治体自身の医療に関する問題の解決をより困難な状況へと誘導しているように思われます。
医師の仕事は土木作業員のような肉体労働ではないから、何時間働いてもさほど疲れないとお考えでしょうか。あるいは寿司店でラーメンを無理に注文する程度とお考えでしょうか。寿司店でつくったラーメンでもお客さんが亡くなられるようなことはまずあり得ません。しかし、医師の能力を超えた仕事量を負わせられた時、患者さんは大変危険な状況に陥る可能性があります。そのことをどのようにお考えでしょうか。
他方で多くの地方や都市部の大病院でさえも「救急患者の受け入れ拒否がおきているのでしょうか。」。
大病院には医師が居ないことはまず考えられません。しかしながら、医師はいてもどんな患者さんが運ばれてくるかわからないのにすべての科の専門医を待機させられる病院はほとんどないという現状を理解していただきたいと思います。
人口10万人あたりの医師数は、230人ですが、この内訳は以前、このサイトの「医師の概要」で述べたとおりです。http://takamidai-clinic.com/?p=2005B8%AB%E6%95%B0
もう少し付け加えましょう。医師は確かに大学で全診療科の勉強はしていますが、全診療科を経験している医師は一人もいません。従って、夕張診療所の村上医師は、救急患者さんを受け入れても責任を持って診療できないから、断っているのです。
かつて夕張は炭坑で栄え、1950年代から1970年代後半までの日本の経済発展の最盛期を支えてくれました。私も子供の頃、学校のストーブで石炭が使われていた事を覚えていますが、読んで字のごとく「石の炭」のようには見えるものの、植物の化石成分であり、「黒いダイヤ」とまで言われた貴重な燃料資源でした。
夕張市の著しい発展のあとには炭坑の閉山、それに伴い急速な衰退と莫大な借金を抱え、2007年に財政再建団体に指定された。まさに日本中を支えた人口7万人の夕張市がいまは1万人に減少し、高齢化率は40%を越えています。 この夕張市は40年後の日本の姿だろうとも言われており、この状況を支えられなければ、日本の将来はないとまで指摘されています。
そのような夕張市に村上医師のみならず、多くの方々が再建に向けてまさに心血を注いでいても再建への道のりは、はるかに遠く、長い道のりです。国民が再建までの過程を支えられないことこそが、日本の消滅に向かっているような気がしてなりません。医療格差はすでに始まっているのではないでしょうか。
私の意見は、ドクターヘリで救われる命よりも一人の医師を育てることでより多くの命が支えられると考えていますが、皆さんはいかがでしょうか。
夕張市立診療所 http://kibounomori.jp/