切除不能癌の治療法2015 (6)オキソドール注射後に行う放射線治療3
切除不能癌の治療法2015 (6)オキソドール注射後に行う放射線治療3
下記のタイトルの結果の概要についてご説明します。
前回の(5)オキソドール注射後に行う放射線治療2 では、この臨床試験に参加した患者さんの説明とリニアックによる放射線治療における「ヒアルロン酸+オキソドール」を用いた放射線増感剤の準備方法と使用頻度など、方法についてご説明させて頂きました。
さて、今回は、いよいよその治療結果について説明させて頂きます。
タイトル:Phase I study of a new radiosensitizer containing hydrogen peroxide and sodium hyaluronate for topical tumor injection:
a new enzyme-targeting radiosensitization treatment, Kochi Oxydol-Radiation Therapy for Unresectable Carcinomas, Type II (KORTUC II).
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訳:「過酸化水素とヒアルロン酸ナトリウムを腫瘍局所に注射する新しい放射線増感法:第一相臨床研究、新しい酵素標的放射線増感治療、切除不能細胞癌に対する高知医大オキシドール-照射療法、Type II(KORTUC II )]。
公表雑誌:Int J Oncol. 2009 Mar;34(3):609-18.
研究者:Ogawa Y1, Kubota K, Ue H, Kataoka Y, Tadokoro M, 他。
研究機関:Department of Diagnostic Radiology and Radiation Oncology, Medical School, Kochi University (高知大学医学部 放射線腫瘍学、診断放射線学研究室)
患者評価
治療結果の判定は、固形癌効果判定基準(RECISTガイドライン、リンク先8ページの表1)に沿って1ヵ月につき1回の通常の間隔で評価しました。
(上のリンク先にCR(完全寛解),IR(不完全寛解)、PR(安定状態)などの評価が示されていますが、下の結果の基準と少し違っています。それでも細かな点は気にせずに進みましょう)
<寛解とは?>
治療をつづけながら、病気の症状がほぼ消失した状態です。
治療をやめ治る可能性もありますが、再発する可能性もあります。再発の兆候に注意しながら、治療を継続するか、定期的な検査で経過を観察する必要があります。
ここでは治療困難なガンについての評価ですので、再発や転移のリスクがありますので、完治と判断されるまでには5~10年もの経過観察あるいは継続治療を必要とします。
治療における副作用に関しては、標準的な評価スケールに基づいて評価した。
また、治療に関連した合併症は、12ヶ月以上の間、詳細に評価した。
結果 治療の有効性の判定
治療結果は、下の表1に示しました。
左列のCase]1~11は、症例数を示します。
この臨床試験に参加した11名の患者の内、固形癌効果判定基準に基づく治療効果の判定は、下の表1に示した通りです。
9名は、完全寛解(CR)、
1名は、安定状態(PR)、
残りの1名は、疾患の所見がなく治癒(NED)と判定されました。 ・・・・下の表1の症例5です。
赤色のアンダーラインは、乳ガンです。
完全寛解(CR)の内、7人の患者は、乳癌でしたが、手術を受けられず、非外科的な温存療法を受けた患者も含まれています。
これらの患者は、5~15ケ月の間、局所における再発も遠隔転移も見られていません。
完全寛解(CR)した残りの3名の患者の内、
1名は、乳癌の化学療法抵抗性巨大腋窩リンパ節転移および鎖骨上リンパ節転移がありました。
他の1名は、再発性悪性線維性組織球腫でした。 ・・・・症例2。
もう1名は、再発性繊維肉腫でした。 ・・・・症例4。
安定状態(PR)の患者は、頸部の巨大転移性リンパ節腫大がありました。
不変(NC)を示した患者さんの 腫瘍は、右足に大きな再発性悪性シュワン細胞腫でした。・・・症例3。
治療に伴う副作用
この治療による有害事象は、表IIに示してありますので、参照して下さい。
その概略は以下の通りです。
6人の患者は、軽い有害事象を示しました。その多くは、注射部位の軽い局所痛みでした。
全11人の患者に見られた放射線により誘発された皮膚炎は軽症でした。
切除不能細胞癌に対する高知医大オキシドール照射療法IIの治療効果は、平均して、12ヵ月以上継続していました。
次回は具体的な治療例をご紹介させて頂きます。