白血球 (7)成人T細胞白血病(ATL)について
白血球 (7)成人T細胞白血病(ATL)について
ATL(成人T細胞白血病)について解説したいと思います。
以下は厚生労働省のサイトからの抜粋です。http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken16/qa.html
ATL、HTLV-1 とは?
ATLは成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia)の略称で、白血病だけでなく、リンパ腫を伴うこともあります。このATLは、HTLV-1 (human T-cell leukemia virus type I、ヒトT細胞白血病ウイルス-タイプ1)と言うウイルスが原因となって起こるものです。
HTLV-1 は白血病の他にHAM(HTLV-I関連脊髄症)と言う疾患を発症する事もあります。但し、ATLやHAMを発症するのは感染者のごく一部であり、また感染後すぐに発症するわけでもありません。
<解説>
HTLV-1ウイルスはレトロウイルスであり、CD4+T細胞に感染し、逆転写酵素によって感染した細胞のDNAにウイルス自身の遺伝子を組み込みます。
組み込まれた遺伝子は感染T細胞にIL-2とそのレセプターを発現させます。
その結果、IL-2が産生されるとHTLV-1が感染したT細胞を増殖させる作用をもつため、感染T細胞はどんどん分裂増殖していきます。
レトロウイルスとは
ウイルスの遺伝情報としてmRNA(メッセンジャ-RNA)を持っており、このRNAからDNAにコピーをする酵素(逆転写酵素)を持っているウイルスの事をレトロウイルスと言います。
レトロウイルスは、細胞に感染するとRNAと逆転写酵素という酵素を放出し、ウイルスのRNAを鋳型としてDNAをつくり、このウイルス由来のDNAを感染細胞DNAに組みこませます。この過程が、DNAを鋳型としてRNAをつくるというヒトの細胞で起こるパターンと逆であることから、逆向きを意味する「レトロ」と名づけられています。その結果、感染細胞は分裂するたびに、自身の遺伝子と共に組みこまれたウイルス由来DNAの複製もつくります。ウイルス由来のDNAは潜伏していますが、何らかの機会に活性化して細胞機能を乗っ取り、新たにウイルスをつくらせることもあります。こうして産生された新しいウイルスは、感染細胞の外へ出て別の細胞に侵入します。
<少し変なたとえ>
HTLV-1ウイルスを「たこ焼きの遺伝情報」に例えてみましょう。
普通、たこ焼きは金属の鋳型からたこ焼きをつくります。しかしHTLV-1ウイルス(たこ焼きの鋳型(遺伝情報))は自分がたこ焼きのくせに、感染細胞(工場)を乗っ取ると工場内で、たこ焼きの鋳型をつくらせ、この鋳型からHTLV-1ウイルス(たこ焼き)までつくらせてしまいます。
さらに感染細胞(工場)の稼働率を上げるために周囲の工場(細胞)にまで情報を伝えて、感染細胞を増やし、自ら(たこ焼き)も増やしてしまいます。返ってわかりにくかったでしょうか。
HTLV-1 の感染経路は?
HTLV-1 の主な感染経路は、主に母親から子供への母乳を介した母子感染です。その他、性行為により男性から女性への感染があることが知られています。キスや唾液でうつることは、ありません。また輸血による感染も検査を行っていますので、現在では感染の心配はありません。
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キャリアとは?
HTLV-1ウイルス を持っていて、ATLやHAMなどの病気を発病していない人をHTLV-I のキャリアと呼びます。HTLV-1 に感染するとウイルスは一生身体の中にとどまり、持続感染状態となります。
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キャリアだと言われました。どうしたらよいでしょうか?
今のところATLやHAMの発症を予防する方法はありません。また、特別な健康管理の方法も現在のところありません。しかし、母子感染については、母乳による感染が最も関与していると指摘されていることから、かなりの場合「親の意志」で予防できます。生まれてくる自分の子どもにできるだけウイルスをうつさないように、栄養方法を選んでいただきたいと思います。
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キャリアからのATL発症率は?
キャリアからのATL発症は40 歳を越えるまではほとんどありません。40 歳を過ぎると年間キャリア1,000 人に1人の割合で発症します。生涯発症率は約5%と言われています。
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予防接種はありませんか?
感染を防ぐために有効な予防接種は今のところ開発されていません。すでに感染した人に有効な手段もありません。
ATLの治療は?
白血病の治療を行いますが、ATLの治療は白血病の中でも難しい部類に入ります。
他にもATLに関する情報が書かれていますので、関心のある方は上記のリンクを閲覧して下さい。