高齢者に対する見方 (4)役割の減少
高齢者に対する見方 (4)役割の減少
「(1)高齢者の定義」では、これまでの高齢者の運動機能の向上や社会環境の変化から、「高齢者の定義」そのものを見直す必要性について触れました。
また「(2)加齢以外で何が違う?」では、高齢者は肉体的な身体能力の低下を伴うことで、心身ともにバランスのとれた人格に変えられる面」があることを示しました。
そして(3)高齢者自身も気がついていない「価値」では、ビンテージの素晴らしさは、高齢者自身も気がついていない事。つまり社会全体がその価値に気がついていない事を示しました。
今回は、高齢者を見る側の変化について考えて見ましょう。
見る側の変化 ー背景に役割の機会減少がある-
高齢者を見る側・接する側である若い人達の高齢者に対する認識の面でも、以前とは異なる状況があります。
ここで言う以前とは、大家族性で一軒家に3世代、4世代が暮らしていた頃と、核家族化が進んだ現在とでは、「家族内」における高齢者の役割もすっかり変わっています。
例えば、大家族であれば、親に叱られた後でも祖父母が孫の感情をフォローしたり、親の指導やしつけに祖父母が考えを示す(さり気なく諭す)事で、親自身も自らの子育てにおける軌道を促す役割を果たしていたのではないでしょうか。
しかし、核家族化が進んだ現在では、それぞれの考えや価値と高齢者の判断は対等になっています。その原因は、日常生活における高齢者の役割が減ってしまっているからかも知れません。
また、高齢者自身も核家族となって暮らしており、日常生活で子に頼る事も出来ないため、結果的にいつまでも生活活動における自立が求められています。
そのため、大家族の中で果たしてきた役割は、核家族化した家族内では従来までの高齢者としての役割を果たす機会が失われ、結果的に高齢者が評価されにくい状況にあります。
このようにせっかく精神的にも心身の円熟に至り、バランスの取れた人格も「存在するだけで周囲に安心感を与えてきた役割」が周囲に影響を与える機会が大きく減少しています。