インフルエンザワクチン接種による副作用報告
インフルエンザワクチン接種による副作用報告
厚生労働省・健康局結核感染症課の予防接種室・調査管理係は、2012年1月16日、平成23年度の第1回インフルエンザ予防接種後副反応検討会及び第3回子宮頸ガンワクチン予防接種後副反応検討会資料を公表した。http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000020b41-att/2r98520000020b5i.pdf
今回は上記の内、インフルエンザの予防接種による副反応について紹介させていただきます。
平成23年10月から11月30日報告分による副反応報告数とその内の重篤例、死亡例は以下の通りであった。
また、ワクチン接種との関連性が疑われた例、関連性がない例についても示された。(但し、下記のデーターには製造業者からの報告は、ワクチン接種との関連性についての評価がなされていたいため含まれていません。)
2011年10月~11月30日までの副反応件数、重篤件数(死亡数)とワクチン接種との関連性の有無について
報告数 | 関連性有り | 関連性なし | |
副反応 | 328件 | 212件 | 116件 |
内重篤例 | 46件(死亡2件) | 26件(死亡0件) | 20件(死亡2件) |
昨年末のインフルエンザワクチン接種における副反応の2/3はワクチン接種との関連性が指摘され、1/3は関連性が疑われなかった。
また、重篤例中の2例の死亡は高齢者の肺炎によるものでワクチン接種との関連性は指摘されなかった。重篤な副反応の要因については何ら解析できていない。
接種年齢別の副反応報告件数(重篤例数、死亡例数)
0~9才までの報告件数 |
169件(重篤例:22件、死亡:0件) |
10~19才までの報告件数 |
13件(重篤例:2件、死亡:0件) |
80才以上の報告件数 |
21件(死亡:2件) |
接種年齢別副反応例数は、9才までで全体の8割を越えていた。その原因の解明が待たれる。
従来の季節性ワクチン、新型インフルエンザワクチン及び新型及び季節性ワクチンの比較
接種年 | 推計接種人数 | 副反応数 | 死亡数 | |
季節性ワクチン | 2008~2009年 | 4159万人 | 121人 | 2人 |
2009~2010年 | 4740万人 | 120人 | 9人 | |
新型ワクチン | 2009~2010年 | 2283万人 | 2428人 | 133人 |
新型及び季節性 | 2010~2011年 | 4518万人 | 673人 | 16人 |
過去の季節性ワクチンと新型ワクチン及び新型と季節性の混合カクテルとなったワクチンの比較では、新型ワクチンの接種以降、副反応が増えている。
しかし新型ワクチン接種との副反応との関連性よりも新型インフルエンザウイルスそのものの影響や新型インフルエンザウイルスを恐れるばかりに多少体調が整わない状態でも接種を希望したり、長期の学校及び会社の欠席や休業そのものに対する社会的混乱を避けたいため、社会全体が一時的にパニック状態に近い対応が見られた。これらの背景を従来と同じ社会的背景として比較しても得られるものはなさそうに見える。
<上記データに対する当院の考え方>
1)ワクチンでも薬剤でも副反応がないなどとは考えず、体調が良くないときにはしっかりと休養を取っていただきたい。
2)ワクチン接種に関しては体調の良い時期に早めに接種されることをお勧めします。
その理由は、インフルエンザが流行し、体調を崩しながらせっぱ詰まった状態でワクチンの接種を行っても、インフルエンザウイルスに対する抗体があがるまでに風邪を引いたり、感染する可能性が上がってから接種しても間に合わない場合もあるからです。
3)副反応に対する対策として、15才未満の小児児童に対するワクチン接種後、院内に30分ほど滞在し、副反応や異常行動に対応できるよう注意喚起していますが、さっさと帰られるご両親が少なくありません。
より安全な接種を行おうとしている現場と何かあってから騒ぎ出す当事者との溝をどのようにお考えでしょうか。