医者を青くするもの (44)緑茶2
医者を青くするもの (44)緑茶2 -11年間で緑茶を毎日何倍飲んだら死亡率は減るか?-
前回に続いて、緑茶の心血管疾患及びガンに及ぼす影響に関する以下の報告をご紹介します。
タイトル:Green tea consumption and mortality due to cardiovascular disease, cancer, and all causes in Japan: the Ohsaki study ← 前回の(43)緑茶1と異なるリンク先ですが、どちらでも構いません。
訳:「日本における心血管疾患、ガン及びすべての病因による緑茶摂取量と死亡率」
研究者:Kuriyama S1, Shimazu T, Ohmori K, Kikuchi N,他。
研究機関:Division of Epidemiology, Department of Public Health and Forensic Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine, Sendai, Japan(東北大学・医学部の公衆衛生学教室と法医学教室の疫学部門)
公表雑誌:JAMA. 2006 Sep 13;296(10):1255-65.
(A) 方法
調査対象者は、事前に宮城県の大崎国民健康保険加入者の40~79歳の全員に対して食事摂取量(40品目の食品頻度アンケート)を調査し、極端に摂取エネルギーの多い人と少ない人、及びすでに心血管疾患、脳卒中、ガンの病歴のある人を除外しました。
また、アンケートは4杯の平均飲料(緑茶、ウーロン茶、紅茶とコーヒー)と食べ物に関する36項目(アルコール、タバコ、家族の病歴、職業、教育レベル、身長、体重、毎日の散歩時間、スポーツ・運動の習慣)について調べました。
緑茶摂取量の頻度は、次の5つのカテゴリーに分けました:
1)飲まない、 2)たまに飲む、 3)一日に 1~2杯飲む、 4)一日に3~4杯飲む、 5)一日5杯以上 の5つに分類しました。
(B) 結果
(1) 緑茶の消費カテゴリー別に見た調査対象者の特性(表1、表2)
上記タイトルの表1及び表2には、この調査研究に参加する人の特性が示されています。
より頻繁に緑茶を消費する調査対象者は、年齢が高く、失業(退職)しており、スポーツや運動に積極的に関わっていました。
そして高血圧や糖尿病の病歴が男女共にあり、歩くことが少ないと言う特徴もあります。
男性は胃潰瘍の病歴が、女性では肥満の病歴を持っていることが多かったことなどがわかります。
さらに男女共に味噌汁、大豆製品、魚、乳製品、果物、野菜、ウーロン茶、紅茶などの個々の食品や飲料を消費する事が多いものの、コーヒーの消費は少なく、喫煙状況や飲酒と緑茶消費カテゴリの間に明らかな関連は見られませんでした(緑茶の摂取量と喫煙量及び飲酒量との関連性はなかった)。
(2) 11年間の緑茶摂取量が示す緑茶一日一杯未満とそれ以上の摂取の比較(ハザード比の95%信頼区間が示す死亡率の差) ・・・・下の表3を参照しならお読み下さい。
11年間の追跡調査で調べた人数は、延べ人数で 374, 174 人で、死亡者総数は 4,209 人でした。 表3は、緑茶の消費量とハザード比の95%信頼区間の関係を示した結果です。
ハザード比については、下記の<ハザード比とは>の説明を参照して下さい。
なおデータは追跡調査を始めた最初の3年以内になくなった人は、すでに持病があった事が死亡原因である可能性が高いことから除外しました。
<表3の見方>
表3の左端は、11年間の総対象者数、11年間の死亡者数、年齢と性の調整済みハザード比、多変量ハザード比、調査開始から3年以内の死亡を除いた多変量ハザード比が示されています。
ここで年齢調整済みハザード比とは、緑茶を一日に5杯以上飲む人では、退職した人が多いことから、緑茶をあまり飲まないグループとの間で年齢の差が生じている可能性が考えることから、年齢差が反映されないように調整したハザード比である事を意味します。
<ハザード比(HR)とは>
ここで言うハザード比とは、緑茶を一日に1杯未満しか飲んでない場合の確率(致死率)を1として、1~2杯、3~4杯、及び5杯以上の群で生じる致死率を示しています。
ハザード比が1を超えている場合は、致死率が対照群(緑茶一日1杯未満)に比べて~%高くなる、という事を意味します。
例えば、ハザード比(HR)=1.05なら、5%のリスク(致死率)上昇です。
逆に、ハザード比(HR)=0.90なら、10%のリスク(致死率)低下を意味します。
さらに統計学的なハザード比(HR)には幅があることを考慮し、95%信頼区間でハザード比の幅を示しています。
例えば上の表で左上のハザード比が 0.94 で95%信頼区間(CI )が 0.86-1.03 なら、ハザード比は0.86-1.03の範囲に収まり、「1」をまたいでいる事から両群に差はない事を意味します。
また、上の表で右上のハザード比が0.83で、95%信頼区間が0.77-0.90であれば、対象として「1」とした緑茶一日1杯未満飲用群と比較して10%以上の割合で致死率が低下した事を意味します。
少し長くなりましたので、結果の解釈は次回ご説明します。