医者を青くするもの (46)緑茶4 地域医療に貢献する 医者を青くするもの (46)緑茶4 -緑茶を毎日何倍飲んだら心血管疾患のリスクは下がる?- 前回は、下記の報告から「緑茶を毎日5杯以上飲むと死亡率が下がる」事を示しました。 今回は、心血管疾患のリスクに及ぼす緑茶の効果についてご説明します。 タイトル:Green tea consumption and mortality due to cardiovascular disease, cancer, and all causes in Japan: the Ohsaki study 訳:「日本における心血管疾患、ガン及びすべての病因による緑茶摂取量と死亡率」 研究者:Kuriyama S1, Shimazu T, Ohmori K, Kikuchi N,他。 研究機関:Division of Epidemiology, Department of Public Health and Forensic Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine, Sendai, Japan(東北大学・医学部の公衆衛生学教室と法医学教室の疫学部門) 公表雑誌:JAMA. 2006 Sep 13;296(10):1255-65. (A) 方法 死亡原因として心血管疾患及びガンによる死亡率を緑茶の摂取量で比較しました。 (B) 結果 日本人の緑茶の消費による心血管疾患および癌による7年間の死亡率のためのコックス比例ハザード比(時間) ・・・・表4(Table 4)を参照して下さい。 下の表は、表4の中から男女合わせた心血管疾患及びガンによる致死率を緑茶の摂取量で比較したデータ部分のみを抜粋しました。 表4全体は、上のタイトルのリンク先でご覧下さい。 <表の説明> 上の表は、表4の中から、緑茶を毎日1杯未満しか飲まない男女合わせた心血管疾患とガンによる死亡数を「1」として、緑茶を毎日1杯以上飲む群の心血管疾患及びガンによる死亡リスクをハザード比で比較したデータです。 上の表の左端列には緑茶を毎日1杯未満しか飲まない群の「心血管疾患による死亡数261例のハザード比を「1」として現した場合、緑茶を毎日1杯以上飲む他の群との比較を示しています。 また、表中の下には、緑茶を毎日1杯未満しか飲まない群の「ガン」による死亡数256例のハザード比を「1」として現した場合、緑茶を毎日1杯以上飲む群との比較を示しています。 <結果の解釈> 1) 注目すべき点は、上の表の赤丸で示した部分です。このハザード比の95%信頼区間はいずれも「1以下」を示しており、緑茶を毎日3杯以上飲む群では、心血管疾患が明らかに低下している事が証明されました。 2) 他方、下の段は、ガンにより死亡リスクを示しています。そして赤丸の下に示されたハザード比の95%信頼区間は、いずれも「1」をまたいでいることから、緑茶の摂取量によりガンの死亡リスクは下げられていなかった事を示しています。 3) 上の抜粋にはありませんが、報告中の表4の男性のハザード比のデータを見ると、男性では緑茶を毎日5杯以上飲んでもガンによる死亡リスクだけでなく、心血管疾患の死亡リスクもほとんど下がっていませんでした。 4) それに対して、報告中の表4の女性のデータは、緑茶を毎日3杯以上飲んだ群で心血管疾患のリスクは「1以下」と、緑茶による心血管疾患の低下が証明されました。 5) しかしながら、女性でも緑茶の摂取による癌リスクの低下は認められませんでした。 (C) 結論 これらの結果から、緑茶摂取量は、ガンによる死亡リスクを減らすことは出来ませんが、心血管疾患による死亡リスクを大きくて減少させ、その効果は、男性よりも女性で顕著である事が明らかにされました。 つまり、前回示した「緑茶を毎日5杯位上飲むことによる死亡率の低下は、心疾患血管の低下による」と考えられます。