医者を青くするもの (64)黒タマネギジュース4 地域医療に貢献する 医者を青くするもの (64)黒タマネギジュース4 前回に引き続き、糖尿病ラットにおける黒タマネギジュースの効果の検討を行った下記の報告をご紹介します。 今回は、ストレプトゾトシン誘導性糖尿病ラットにおける黒タマネギジュースの効果についてご説明します。 タイトル:In vivo Investigation of Anti-diabetic Properties of Ripe Onion Juice in Normal and Streptozotocin-induced Diabetic Rats. 訳:「ストレプトゾトシン誘導性糖尿病ラットと正常ラットにおける熟したタマネギジュースの抗糖尿病活性の検討」 公表雑誌:Prev Nutr Food Sci. 2013 Sep;18(3):169-74. 研究者:Lee CW, Lee HS, Cha YJ, Joo WH, Kang DO, Moon JY. 研究機関:Institute of Marine BioTechnology, Pusan National University, Busan 609-735, Korea. KT&G Central Research Institute, Daejeon 305-805, Korea.、他。 ストレプトゾトシンとトリプタミドについては、「黒タマネギジュース1」でもご説明しましたが、再度、下記に示しておきます。 <用語説明> ストレプトゾトシン 天然由来の有機化合物で、膵臓のβ細胞に対して毒性を持つ事から、膵臓ガンの治療薬として用いられると共に、動物実験用では、高用量で1型糖尿病、低用量で2型糖尿病モデル動物の作成に用いられています。 従って、今回の報告では2型糖尿病モデルラットの準備に利用されています。 トルブタミド 膵臓のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進する血糖降下薬です。 膵臓に働きかけインスリンの分泌を増やすことで、血糖値を下げます。主に2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)の治療に用います。 (A) 方法 ・・・ストレプトゾトシン(SZT)誘導性糖尿病ラットにおける熟成した黒タマネギ・ジュースとトリプタミドの影響 ストレプトゾトシン(60 mg / kg体重)を一回のみ腹腔内投与した2日後に血糖値が 300 mg/dl を超えたラットを糖尿病ラットとみなしました。 この糖尿病モデルラットを次の3群に分けました。各グループのラットは6匹です。 1) グループ1は、ストレプトゾトシン(SZT)投与のみ。 2) グループ2は、SZT+黒タマネギジュース(15 ml / kg体重)を一回経口投与した。 3) グループ3は、SZT+血糖降下剤トルブタミド(250 mg/ kg体重)を一回経口投与した。 これら3つのグループのラットは一晩絶食後、黒タマネギジュースあるいはトルブタミド投与後6時間後まで血糖値を調べました。 (B) 結果 ・・・ストレプトゾトシン誘導性糖尿病ラットにおける熟成した黒タマネギ・ジュースとトリプタミドの影響 この結果は、表3に示されています。 <表3の説明> 上のリンク先の表3の一行目は、平均血糖値±標準誤差(SEM)を現しています。 二行目は、 1) コントロール(STZ:ストレプトゾトシン投与)群(上のグループ1)、 2) 黒タマネギジュース(15 ml /kg体重)投与群(グループ2)、 3) トルブタミド(250 mg /kg体重)投与群(グループ3)を示しています。 この表3の左の列目は、食後の血糖値の変化を6時間後まで調べたことを指しています。 この表3の左から2列目のコントロール(STZー注入)群は、ストレプトゾトシン投与二日後の血糖値を0時間として、6時間後までの血糖値の変化を示しています。 表3の左から3列目は、黒タマネギジュース(15 ml /kg体重)を経口投与後の血糖値の変化を示しています。 表3の左から4列目は、トリブタミド(250 mg/Kg体重)を投与後の変化を示しています。 最右端は、P値(危険率)を表しています。 <結果の解釈> ・・・()内のグループ番号は、上の「(A)方法」で説明したグループ番号を表しています。 (グループ1):左から2列めのコントロール(ストレプトゾトシンSTZ投与による糖尿病ラット)の血糖値は、30分で血糖値のピークを迎え、その後、2時間後から血糖値は低下し始めていました。 (グループ2):左から3列めの黒タマネギクジュース投与群のラットでは、投与30分後、血糖値はピークを迎え、1時間後には血糖値の低下が認められ、2時間後には投与前の血糖値まで低下が見られています。 但し、P値(危険率)は1%以下としています。 (グループ3):左から4列目の血糖降下剤トリブタミドを投与されたラットでは、血糖値の上昇が見られませんでした。P値(危険率)は2.5%としています。 上の結果から、研究者らは黒ニンニクジュースは、血糖降下剤トリブタミドに近い血糖低下効果を示したと結論づけています。 <私見> 前回の「黒タマネギジュース3 の<私見>」でも示した通り、検定データに平均±標準誤差(SEM)を使用しており、統計的な信頼性を欠いていると判断されます。 加えて、多重比較(コントロール群、黒ニンニクジュース群、血糖降下剤群)におけるデータのばらつきに関する分析がなされていません。 データのばらつきの具合によって、検定方法異なる事から、統計処理の手法に論理性を欠いています。 またダンカンの多重比較は、検定法として有意差が出やすい手法であり、そのデータに標準偏差ではなく標準誤差を用いたことで、意図的に有意差を誘導していると考えられても仕方のない解析を行なっています。