認知症と生活習慣の関係 (12)血中ホモシステインと認識力1 地域医療に貢献する 認知症と生活習慣の関係 (12)血中ホモシステインと認識力1 -日本人高齢者の食生活における認知状態と血中ホモシステインの関係- タイトル:Raised homocysteine and low folate and vitamin B-12 concentrations predict cognitive decline in community-dwelling older Japanese adults 訳:「高ホモシステイン血症と低葉酸、低ビタミンB12濃度から、日本人高齢者の認識力の低下を予測する」 研究者:Koike T1, Kuzuya M, Kanda S, Okada K, Izawa S, Enoki H, Iguchi A. 公表雑誌:Clin Nutr. 2008 Dec;27(6):865-71. 研究機関:Department of Geriatricas, Nagoya University Graduate School of Medicine, Japan. 名古屋大学大学院の老年科研究室。 はじめに 認識力の低下している人あるいは認知症高齢者の数は先進諸国で増加し続けています。 多くの認知症に関する研究の取り組みにも関わらず、大部分の認知症は症状を進行させています。 <ホモシステインに影響を及ぼす要因> ホモシステインは、メチオニンの代謝の間に形成されるアミノ酸です。 一般に血漿全ホモシステイン濃度を決める要因は、年齢、ビタミン濃度(葉酸、ビタミンB-6とB-12)、腎機能、メチレン・テトラヒドロ葉酸還元酵素(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)と薬剤です。 <ホモシステインと動脈硬化及び認知症の関係> 高ホモシステイン血症は、動脈硬化の危険因子であり、増加した血中ホモシステイン濃度が認識力低下及び認知症と関係していることが示されています。 さらに最近の研究報告は、高いホモシステイン濃度が認知症とアルツハイマー型認知症の進行にも関与する危険因子であることを示唆しています。 <ホモシステインの作用機序> これら多くの研究は、アルツハイマー病と血管性認知症の間の病理学的関係について、高齢患者の高い血中ホモシステインが、両認知症の危険因子である事を推測させています。 また血中ホモシステインは、神経細胞のアポトーシスを促進したり、神経毒作用を示すことで神経細胞を損傷し、認知機能に影響を及ぼすと考えられそうです。 <血中ホモシステインに葉酸やビタミンB12が関係する> このように認識力におけるホモシステイン上昇の役割が指摘されている一方で、減少した血清葉酸またはビタミンB12濃度の役割については説明されていませんでした。 ところが最近の研究では、ホモシステイン増加に伴う認知力の低下と葉酸の相対的重要度が明らかにされてきました。 すなわち、アルツハイマー病と血管性認知症で、高ホモシステイン血症だけでなくビタミン類の低下も危険因子としての可能性が指摘されました。 これらの結果から、アメリカでは高齢者に葉酸を補うことで高ホモシステイン血症を改善しようという試みがなされています。 <研究目的:日本人の食事におけるホモシステインとビタミンB12と認知症の関係は?> 今回の調査研究では、日本人高齢者の一般的な食生活では、比較的野菜を豊富に摂取している事から、食事から葉酸が補なわ易く、血中の葉酸、ビタミンB12、及びホモシステインを調べることで以下の点を明らかにしたいとしてこの研究を行いました。 1) 血漿ホモシステインを測定し、認知症の予測因子としての濃度を明らかにする。 2) ホモシステインとビタミンB濃度と認識機能の関係を明らかにする。 上記の報告の詳細については次回ご説明します。 <関連情報> (9)認知症に関係するホモシステインとは (10)認知症+脳梗塞でホモシステインは上がるか? (11)血管性認知症でホモシステインを下げると