食品添加物 (39)キシリトールの毒性は?
食品添加物 (39)キシリトールの毒性は?
厚生労働省によると、キシリトールの安全性には次のように紹介されています。
(1)毒性
①反復投与/発がん性試験
マウス及びラットのエサに2、10、20%のキシリトールを混ぜて102~106週間の反復投与試験を行った結果、10%以上の投与群の雄で体重増加抑制、膀胱結石の発生率増加、膀胱移行上皮細胞の過形成及び異形成増加が認められた。20%投与群で盲腸の膨満、副腎髄質の褐色細胞腫の増加がみられた。
これらの変化は、高濃度のキシリトール投与により、栄養障害を起こしたこと、シュウ酸及びカルシウムの排泄が増加したと考えられる。また、発がん性は認められない。
なお、20%投与群のキシリトール摂取量は17.0g/kg体重/日である。
ビーグル犬を用いた同様の反復投与試験では、20%投与群で肝比重量の増加が、10%以上の投与群でGPT等の血清酵素値の上昇、門脈周辺の肝細胞質の淡明化がみられた。
肝比重量の増加、血清酵素値の上昇及び門脈周辺の肝細胞質の淡明化は、高濃度のキシリトール投与により、インスリン分泌が促進され、グリコーゲンが生成し、それが肝臓に蓄積したと考えられる。
このような変化は、イヌ以外の動物種では見られていないと米国食品医薬品局は報告している。なお、20%投与群のキシリトール摂取量は5.5g/kg体重/日である。
・・・・これらは「(17)人工甘味料9」で指摘した人工甘味料の性質と一致しています。
②繁殖試験
SDラットのエサにキシリトールを2、5、10、20%投与した際の3世代繁殖試験では、
20%投与群で体重増加抑制が、
5%以上の投与群で盲腸の膨満が、
20%投与群のF3(第3世代)で体重増加抑制、脳・心臓等の臓器重量の低下が認められる。
③催奇形性試験
催奇形性とは、奇形発生に影響を及ぼす性質を意味します。
ラット及びウサギを用いたキシリトール投与による催奇形性試験で、催奇形性は認められない。
④変異原性試験
変異原性とは、DNA や染色体に損傷を与え突然変異を起こす性質を意味します。
細菌、マウス、ヒト培養リンパ球、ヒト線維芽細胞、カイコ、並びにマウスを用いた試験の結果は、いずれも陰性と認められる。
(2)体内動態
キシリトールは、ヒトではグルコースに比べゆっくりと腸から吸収され、その約80%は肝臓で代謝される。
ヒトに1回40gのキシリトールを経口投与した場合、投与後20時間までに、尿中へ未変化体として投与量の0.3~3%が排泄されるが、糞便中への排泄はごくわずかである。
ヒトに吸収されたキシリトールは、キシリトールデヒドロゲナーゼによってD-キシルロースに変換され、ペントースリン酸回路等により二酸化炭素と水に代謝される。
(3)一日摂取量の推計
キシリトールは菓子類、ジャム類等に使用されており、その甘味度はショ糖と同程度であり、菓子類、ジャム類に使用されているショ糖を仮にすべてキシリトールで代替した場合、
平均一日一人あたり摂取量は15.67g/日、体重50kgとすると313mg/kg体重/日である。
なお、同種の糖アルコールであるソルビトールの一日摂取量は、
平均一日一人当たり1,172.1mg/日と報告されており、
体重50kgとすると、23.4mg/kg体重/日と報告されている。
(4)ADI(一日摂取許容量)の設定
以上の試験結果及び一日摂取量の推計から、考えられる毒性レベルよりその摂取量が十分に低いことが予想されるが、JECFA(FAO/WHO食品添加物専門家会議)は、ADIを特定する必要がないと考えています。
(5) 使用基準
ADIは特定する必要がないと考えられることから、使用基準の設定は要しないと考える。
・・・・と厚生労働省は判断しています。
<私見>
以上のデータからは、生命に影響を及ぼすほどの毒性は無さそうですが、甘味料としての一般的な性質は備えており、膵臓を刺激し肥満を誘導すると考えられます。
これらの資料でご注意頂きたい点は、「毒性はない」=無害という事ではありません。
すぐに生命に及ぼすような急性毒性はないという事であり、慢性毒性については検討されていません。
次回は、犬におけるキシリトールの毒性を報告した内容をご紹介します。