食品添加物 (47)デヒドロ酢酸4
食品添加物 (47)デヒドロ酢酸4
食品添加物としてバター、チーズ、マーガリンに使われることがあるデヒドロ酢酸をラットに1回投与したところ、内臓に出血が見られました。
そこで、デヒドロ酢酸が血液の凝固を阻害するかどうかを検討した報告をご紹介します。
今回は早速その実験方法と結果についてご説明します。
タイトル:Anticoagulant effect of sodium dehydroacetate (DHA-S) in rats.
訳:「ラットにおけるデヒドロ酢酸ナトリウムの抗凝固作用」
研究者:Sakaguchi Y1, Suga S, Oshida K, Miyamoto-Kuramitsu K, 他。
公表雑誌:J Appl Toxicol. 2008 May;28(4):524-9.
研究機関:Toxicology and Pharmacokinetics Laboratories, Pharmaceutical Research Laboratories, Toray Industries, Inc., 10-1, Tebiro 6-chome, Kamakura, Kanagawa 248-8555, Japan. 東レ株式会社 製薬研究所。
方法 デヒドロ酢酸をラットに投与する
単独デヒドロ酢酸ナトリウムをラットに一回投与した後、プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を調べた。
(論文の詳細を入手できませんので、デヒドロ酢酸の投与量は不明です)
結果 デヒドロ酢酸投与による凝固阻害
デヒドロ酢酸ナトリウムを投与されたラットのプロトロンビン時間と活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が観察された。
この結果から、デヒドロ酢酸は、ビタミンKの働きを抑制する事で血液の凝固を阻害している可能性が考えられた。
すなわち肝臓において、ビタミンKが関わる蛋白合成部位にデヒドロ酢酸が作用することで、血液凝固因子の合成を阻害していると推察されます。
従って、デヒドロ酢酸は、(心房細動の治療に使用されている)ワーファリンのビタミンK阻害と類似の作用を示し、血液凝固を阻害した可能性考えられます。
デヒドロ酢酸の使用基準の改正 ・・・以下の部分は上記の報告とは関係ございません。
昭和46年3月17日の改正
「食品衛生法施行規則及び食品、添加物等の規格基準の一部改正について」から、デヒドロ酢酸の使用基準は以下のように改正されたので、箇条書きで示します。
1) デヒドロ酢酸及びデヒドロ酢酸ナトリウムをみそに使用することが禁止。
2) チーズ、バター、マーガリンに対する使用量は、1kgにつき2 g以下を1kgにつき1g以下にする。
3) 乳酸菌飲料の原料に供するはっ酵乳及び乳酸菌飲料に対する使用量は、1kgにつき0.2g以下を1kgにつき0.1g以下にする。
4) 乳酸菌飲料(乳酸菌飲料の原料に供するものを除く。)に対する使用量が1kgにつき0.04g以下を1kgにつき0.02g以下に改正する。
昭和47年9月9日の改正では
1) 乳酸菌飲料の原料に供するはっ酵乳、および清涼飲料水に使用することが禁止とする。
2) バター、チーズ、マーガリンに対する使用量が1kgにつき1g以下を1kgにつき0.5g以下に改正する。
改正の理由は、製造技術の向上、低温貯蔵設備の整備等により品質保持がはかられ得ると判新されたためである。 ・・・とした。
・・・・つまり、摂取による安全基準を見直したのではなく製造技術や貯蔵設備の向上により使用基準を下げただけです。
昭和48年5月24日の改正では
デヒドロ酢酸を、「あん類」に使用することが禁止されました。
・・・・その理由は、あん類についてはデヒドロ酢酸をソルビン酸に切り替えた。 との理由です。
・・・・あん類にも使用されていたとは驚きです。上の内容から、あん類への添加がどうして可能なのでしょうか?
また、他の食品への添加は、なぜソルビン酸に変えられないのでしょうか?