医者を青くするもの (88)ケルセチン5
医者を青くするもの (88)ケルセチン5
前回に引き続き、下記の報告の結果についてご説明させて頂きます。
タイトル:Preventative effect of a flavonoid, enzymatically modified isoquercitrin on ocular symptoms of Japanese cedar pollinosis.
訳:「日本人のスギ花粉症における目のアレルギー症状に関するイソケルセチンの予防効果」
研究者:Hirano T1, Kawai M, Arimitsu J, Ogawa M, Kuwahara Y, Hagihara K, 他。
研究機関:Department of Respiratory Medicine, Allergy and Rheumatic Diseases, Osaka University Graduate School of Medicine, Osaka, Japan. 大阪大学医学系研究科、呼吸器内科、アレルギー及びリウマチ疾患部門。
公表雑誌:Allergol Int. 2009 Sep;58(3):373-82.
結果 -(B) イソケルセチン群と偽薬群の鼻のアレルギー症状の比較-
<スギ花粉症における鼻アレルギー症状に及ぼすイソケルセチンの効果>
スギ花粉症による鼻症状における評価では、イソケルセチン投与群と偽薬群の差はそれほど大きくありませんでした(上記リンク先の図3を参照して下さい。ここでは省略します)。
結果 -(C) イソケルセチン群と偽薬群の目のアレルギー症状の比較-
(1) スギ花粉症における目のアレルギー症状に及ぼすイソケルセチンの効果
<グラフの説明>
上の図4の左のグラフが薬物治療スコア+目のアレルギー症状の総評価で、
右上のグラフはスギ花粉症における目のアレルギー症状のみのスコアを示しています。
グラフの縦軸は、スコアを示し、横軸はイソケルセチンまたは偽薬服用後10週まで評価した事を示しています。
グラフ内の●は、イソケルセチン服用群、○は偽薬群です。
左右どちらのグラフでも、イソケルセチン群あるいは偽薬群共に7-8週まではスギ花粉症の症状が徐々に重くなっています。
<右上のグラフ:スギ花粉症による目のアレルギー症状に及ぼすイソケルセチンの効果>
右上のグラフの偽薬群(○)のスギ花粉症における目のアレルギー症状は、3-4週目から急に多く現れ、6週目から8週目にかけて目の症状はピークに達しました。
他方、イソケルセチン群(●)では、6-7週目に目のアレルギー症状が強く現れ、7-8週にピークに達した後、偽薬群と共に目の症状は低下し始めました。
<左上のグラフ:薬物治療と目のアレルギー症状の総合評価に及ぼすイソケルセチンの効果>
目のアレルギー症状スコアに薬物治療スコアを加算し、イソケルセチン群と偽薬群を比較しました。
その結果、左右のグラフを重ね合わせてみると、次の事が解ります。
偽薬群では、3-4週目から目に対する薬物治療を始めた患者さんがいますが、イソケルセチン群ではスギ花粉の飛散ピークの7-8週目になってようやく目に対する薬物治療を開始していた事が解りました。
(2) イソケルセチンの目のアレルギー症状に及ぼす影響について
上記の結果から、スギ花粉症における目のアレルギー症状では、一日100mgのイソケルセチンは、偽薬群に比べて目の症状を抑え、薬物治療の開始を遅らせることで抗アレルギー薬の使用量を減らす事ができると期待されます。