栄養と寿命 (2)百歳以上の栄養調査
栄養と寿命 (2)百歳以上の栄養調査
2011年に韓国のソウル大学・加齢研究室から
「Discovery of novel sources of vitamin b(12) in traditional korean foods from nutritional surveys of centenarians.」と言う論文が、
Kwak CS, Lee MS, Oh SI, Park SC.の3名の研究者によって
「Curr Gerontol Geriatr Res. 2010; 2010:374897.」と言う雑誌に掲載されました。
上記の研究タイトルは、「百歳以上の人の栄養調査から伝統的な韓国食品のビタミンb12が発見された」と言うものです。 早速その内容についてご紹介しましょう。
要約
ヒトの長命は様々な要因によって説明されています。その中で、栄養と言う要因は、日々の食生活の積み重ねという点で、重要な役割を果たしていると考えられています。
しかしながら、どのような食生活が長寿に有効であるかについての理論的な諸説や意見は多くあります。他方、科学的な調査や長寿の根拠については、実態調査に基づく報告は、長寿村のような集団の食生活や食習慣の調査が必要である。
調査・研究方法
そこで研究者らは、韓国で百歳以上の長寿の人の食習慣の調査で、特にビタミンB(12)の状態に関して注目しました。なぜなら韓国における伝統的な半菜食主義的な食事は、栄養がアンバランスであるにも関わらず、長寿との関連を否定できないと言う点で、特に注意を引いていたからです。
その原因として、ビタミンB12が多く含まれる動物性食品が不足していると考えられていたからです(注1)。
面白いことに、研究者らはビタミンB(12)が不完全な食品を摂取するな韓国の百歳以上の人を調査対象としました。そして動物性食品を伝統的食品として摂取する西欧諸国の食品と比較することで、ビタミンB12が韓国の百歳以上の人々には高くないと思われました。
そこで研究者らは、彼らの考えていた(韓国の伝統料理ではB12が低いと言う)予測が、間違っている可能性を確認することとしました。すなわち、韓国の伝統的な食品にもビタミンB(12)が含まれているかもしれないと仮定しました。
結果
ビタミンB(12)成分を調べた結果、いくつかの韓国で伝統的な大豆を発酵する食品(例えばテンジャンDoenjangとチョングッチャンChunggukjang)と海草には、豊富なビタミンB(12)が含まれていることが分かりました。
これらを合わせて考えると、韓国の伝統的な食品(特に発酵食品)がビタミンB(12)を供給することによって野菜をより多く摂取する食事パターンの栄養的アンバランスを補っていると評価されました。
この結果から、韓国の百歳以上の食生活は米と野菜が中心でビタミンが不足しがちな栄養状態であると思われていたが、彼らの食生活における栄養状態の改善には、韓国の伝統料理であるテンジャンとチョングッチャンは、ビタミンb12が豊富なことから、健康の維持と長寿に関わっている可能性が示唆された。
<用語説明>
(注1)ビタミンB12を含む食品 http://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/vitamin_b12.html をご覧頂くとわかりますが、ビタミンB12の多くは魚類・魚介類・肉類・海草に限られています。このリンク先を見る限りでは、野菜や豆類・穀物からは必要量のB12を摂取できるとは思えません。
Doenjang テンジャン
伝統的な韓国の 発酵 大豆ペースト。煮立てると風味を損なうとされる日本の味噌と違い、テンジャンは激しく煮立たせて調理されることもあるが、煮立てれば煮立てるほど風味が増すとされる。
これには必須脂肪酸であるリノール酸とリノレン酸が含まれています。但し匂いが強いそうです。
Chunggukjang チョングッチャン
韓国料理に使われる、発酵させた大豆のペースト。 テンジャンは匂いが強いために、無臭に改良されたのがチョングッチャンで、韓国では特許を取得しています。
<私見>
日本人と食習慣が似ている韓国における長寿は、米と野菜だけでは不足しがちなビタミンを発酵食品で補うことで、栄養バランスが改善されているという点は、注目すべき事実だと思います。
上記の二つの食品がどのようなものか、私にはわかりませんが、日本の味噌とは似ていますが、テンジャンとチョングッチャンのリンク先を見ると違っているようです。是非一度、テンジャンとチョングッチャンを試してみたいと思います。
さて、これらの食べ物が長寿と関連していることが統計的、疫学的に明らかにされましたが、どのような理由で長寿を支えているのでしょうか?別の機会にご紹介させていただきたいと思います。