栄養と寿命 (4)ベジタリアンの健康と栄養状態
栄養と寿命 (4)ベジタリアンの健康と栄養状態
2009年、Winston J Craigは「Am J Clin Nutr, May 2009; 89: 1627S – 1633S.」と言うアメリカの栄養専門の学術雑誌に、
「HEALTH AND NUTRITIONAL STATUS OF VEGETARIANS:Health effects of vegan diets」と言う総説が発表されました。
このタイトルは、「菜食主義者の健康と栄養状態:絶対菜食者の健康状態」と言うものです。
このタイトルにある絶対菜食という言葉は、前回の栄養と寿命(4)ベジタリアンで述べた「ベジタリアンとは」で示したビーガンの事です。
今回の報告は、ビーガン(絶対菜食)の食事が健康に及ぼす影響について調査した報告のまとめ(総説)です。
総説とは、「過去の調査報告や研究報告をまとめたもの」であり、この「まとめ」の根拠となるデータは、それぞれの元の報告書を読まなければなりません。
従って、以下に紹介する総説の内容では、根拠については説明していないことをご理解頂きたいと思います。
調査目的
ビーガン食のような肉、魚、酪農食品や卵を食べないという絶対菜食(ビーガン)の人達は、2006年4月に実施された全国的世論調査によるとアメリカの人口の1.4%いるそうです。
このビーガン食は、10代の若者や青年(特に女性)の間でも人気があり、次第に増えていると言われています。
彼らは、食肉のために育てられている家畜は、病気予防のための抗生剤や成長促進剤が肥料に混ぜられていることなどに批判的であるばかりか、酪農製品や乳製品によりアレルギーが引き起こされることから、大豆を中心とした食事を摂取しています。
しかしながら、このようなビーガン食は、他のラクト・オボ・ベジタリアン(乳卵菜食)と比較して、それなりの利点や欠点が指摘されていました。その一方で、彼らの栄養状態や健康状態に問題がないのかについては、ほとんど追跡調査されずにきました。
この総説の目的は、ビーガン食による健康状態に関して、現在までの情報をまとめることです。そしてビーガン食の栄養学的な懸念や問題点あるいは栄養素として不足している点について議論することです。
次回は、このビーガン食の健康状態に及ぼす影響について具体的にご紹介しましょう。