医者を青くするもの (101)蓮6 -レンコン5-
医者を青くするもの (101)蓮6 -レンコン5-
これまでご説明してきた下記の報告に関する「(97)蓮2 -レンコン1-」から前回までは、「レンコンに含まれるポリフェノールの有効性」について解説してきました。
そこで今回は、下記の報告から「レンコンに含まれるポリフェノール」とはどんなものかについて化学的に分析した結果についてご紹介します。
タイトル:Polyphenolic extract of lotus root (edible rhizome of Nelumbo nucifera) alleviates hepatic steatosis in obese diabetic db/db mice.
訳:「レンコンのポリフェノールエキスは、肥満糖尿病マウスの脂肪肝を軽減する」
研究者:Tsuruta Y, Nagao K, Kai S, Tsuge K, Yoshimura T, Koganemaru K, 他。
研究機関:Department of Applied Biochemistry and Food Science, Saga University, Saga 840-8502, Japan. 佐賀大学、応用生化学と食物化学研究室
公表雑誌:Lipids Health Dis. 2011 Nov 9;10:202.
方法4 -レンコンのポリフェノール分析-
レンコン抽出エキス中のポリフェノールは、ブドウ種子に含まれるポリフェノールの主成分「プロアントシアニジン」が抗酸化力でブドウ色に発色する色と比較する事から、レンコン抽出エキスの抗酸化力で発色する色の濃度を吸光度系で測定した。
(プロアントシアジニンは、ポリフェノールの抗酸化力を検討する際の基準物質として使用されています)
結果4 レンコン抽出エキス中のポリフェノールの分析
上の図4(写真)は、上の段(反応前)が発色反応の前で、すべて透明です。
下の段は、「反応後」で、発色反応後の色の変化を示しています。
左端はポリフェノールが含まれない対照です。
左から2番目はお茶に含まれるポリフェノールのカテキンが含まれていない発色反応陰性の対照です。
左から3番目は、ブドウやリンゴに含まれる「プロシアニジンB2」と言うポリフェノールで、発色反応陽性の対照です。
そして右端がレンコンから抽出されたポリフェノールの発色反応を示しています。この紫色の濃度からレンコンに含まれるポリフェノールの量を推定しています。
方法5 −レンコンのポリフェノールの機器分析法−
上の結果から、レンコンにはポリフェノールが含まれている事が確認されました。
そこで次に、どのようなポリフェノールが含まれているかについて、より化学的にポリフェノールの種類と化学構造を解明する目的で、下に示した機器分析を行いました。
その概要は、ポリフェノールを下のような真空中でイオン化させるカラムクロマトグラフィーで分離した後、質量分析でポリフェノールの分子量を測定することで、ポリフェノールの化学構造を明らかにしました。
下の分析法の原理は、機器分析の専門家に任せて、その結果をご説明します。
エレクトロスプレー質量分析(ES-MS)と マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量(MALDI-TOF MS)分析計で分析した。
結果5 -レンコンに含まれるポリフェノールについて- ・・・図5、図6の質量分析の結果説明
図5は、レンコンのポリフェノールの負イオンモードESI / MSスペクトルです。
このシグナルの結果は、以下の事を示しています。
1) 上のリンク先の左の方には、質量分析(分子の分子量の分析)で分離された
分子量290のカテキン(下図左)と分子量306のガロカテキン(下図右)と言う二つのポリフェノールのシグナルが検出されています。
2) さらに、図5の中央付近には 2-mers、 右端の方には3-mersとそれぞれ2~3本の尖ったシグナルが示されています。この2-mersは、ポリマーの2量体、3-mersは3量体を意味しています。
3) つまり、レンコンに含まれるポリフェノールの正体は、カテキンとガロカテキン及びそのポリマーとしての2量体、3量体が含まれいた事を示しています。
4) 2量体の正体は、図5中央に示されているように、カテキンとガロカテキンの2量体でした。
次に図6は、レンコンのポリフェノールのMALDI-TOF MSスペクトルを示しています。
このシグナルの結果は、次の事を示しています。
1) レンコンに含まれるポリフェノールの正体は、カテキンとガロカテキンの3量体から9量体までのポリフェノールが含まれています。
2)それらのポリフェノールは、カテキンとガロカテキンが様々な割合で構成されている事を示しています。
図7(下の化学構造)は、レンコンに含まれるポリフェノール抽出エキス中の推定化学構造を示しています。
この図のRの部分がH(水素原子)の場合は、カテキンを意味し、
RがOH(アルコール)の場合は、ガロカテキンを意味します。
上の図では、[ ]n で示されている構造が3つ重なっていますので、3量体を示していますが、「n」がたくさんあればそれだけ大きな分子のポリフェノールを構築することになります。
従って、上の3量体のポリフェノールが何らかの原因で分解されてもポリフェノールとしての機能や抗酸化効果が損なわれない事から、レンコンは素晴らしい抗酸化食材であると考えても良いのではないでしょうか。
<私見>
蓮根に含まれるポリフェノールは、中性脂肪の代謝過程を阻害していました。
そのポリフェノールの構造は、主にカテキンとガロカテキンのポリマー(重合体)であることが示されています。
この重合体は分解されてもポリフェノールとしての抗酸化効果は失われません。
従って、蓮根のポリフェノールは、叩いても、叩いてもその機能が損なわれないという点で、ターミネーターのような抗酸化食材ではないでしょうか。
結論として蓮根に含まれるポリフェノールは、ターミネーターのようなしぶとい抗酸化力を持つ。