栄養と寿命 (9)ベジタリアンの癌死亡率は?
栄養と寿命 (9)ベジタリアンの癌死亡率は?
ベジタリアンの癌死亡率
ベジタリアンの研究では、ベジタリアンの食事に含まれる有用な植物由来物質の成分分析と同時に、ベジタリアンの癌発症並びに寿命の調査がなされています。
その結果、ベジタリアンとノンベジタリアンの間では、一部の癌を除いて癌の発生率または死亡率の違いがより明らかではないと言った報告も少なくありません。
その原因については、一口にベジタリアン食あるいはビーガン食と言っても一定の決められた食事内容ではなく、様々な調理方法や様々な野菜類が食材として使われており、栄養学的な問題点についても指摘されているからです。
そして最近の新たな証拠は、ビーガン食を摂取している集団で、低ビタミンD状態が指摘され、この事と発癌リスクの増加との関連性についても指摘されています。
ビーガン食の摂取によって回避される肥満から、脳血管疾患や心血管疾患は避けられても、ビタミンD及びB12が不足している事が発癌と何らかの関連性がある可能性も考えなければならない事が指摘されています。
タンパク質の源が健康に及ぼす影響
赤肉(牛肉・羊肉)とこれらの加工肉の消費量の増加は、多くの調査報告で一貫して大腸癌のリスクを増大させる事が知られています。
その理由は、赤肉による大腸癌のリスク増加は、強力な発癌物質であるN-ニトロソ化合物(NOC)の増加に関連していることから、赤肉消費から生じるN-ニトロソ化合物(NOC)の遺伝子損傷作用が示唆されています。
すなわち、N-ニトロソ化合物がDNA特異的有害付加生成物であるカルボキシメチルグアニンが大腸癌を発症させるとの説が最も有力に支持されています。
これらの指摘から、食物から摂取するタンパク質源として、赤肉の摂取量が高いと大腸癌の発癌リスクが上がることが示されています。
疫学的にも食事におけるタンパク質源として、赤肉の割合が20%から60%まで上昇すると食道、肝臓、大腸、肺ガンのリスクも上昇することが示されています。
さらに、タンパク質源として卵を増やすと膵臓癌のリスクが上がるとの指摘もあります。
そのためビーガン食では、赤肉や卵を避け、マメ科植物由来のタンパク質を多く摂取しています。
このタンパク質源は大腸癌の危険性を減らすばかりか、前立腺癌のリスクも中等度の減少が明らかにされています。
食事と癌の関連性については、まだ多くの未解決の問題があるため、現時点では、ビーガン食が発癌に対して有効で寿命にまで影響を及ぼすと言う説得力のある証拠は、まだ不足している。とまとめられています。
(私見:ビーガン食が発癌を押さえていると言うよりも、赤身の肉食を減らすことで大腸癌を減らせている可能性が考えられそうです。)
次回は「ベジタリアンの骨の健康状態に及ぼす影響について」ご紹介したいと思いますが、その前に「骨についての基本的知識」から補いましょう。