BMIと死亡率の関係 (4)BMIと死因の関係
BMIと死亡率の関係 (4)BMIと死因の関係
国立がん研究センターの「肥満指数(BMI)と死亡リスク」の原著論文を下記から紹介しています。
前回は、男女別にBMI23-25の死亡率を「1」とした時、他のBMI区分における全死因の相対的比較を示しました。
今回は、男女別に死因別死亡リスクをBMI区分で比較しています。
タイトル:Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies.
訳:「日本人のBMIと死亡率の関係」
研究者:Sasazuki S1, Inoue M, Tsuji I, Sugawara Y, Tamakoshi A, Matsuo K, 他。
研究機関:Epidemiology and Prevention Division, Research Center for Cancer Prevention and Screening, National Cancer Center, Tokyo, Japan.
公表雑誌:J Epidemiol. 2011;21(6):417-30.
結果4 -男性及び女性のBMIと死因-
男性のBMIと死亡率の結果は上記タイトルのリンク先の表2に、また女性のBMIと死亡率の結果は表3に示されています。
そしてBIM23~25の死亡率を「1」とし、他のBMI区分の死亡リスクを相対的に現しています。
このサイトでは、表2と表3は下のようにグラフ化しました。
従って、下のグラフの縦軸は、相対的な死亡リスクであり、ハザード比を意味しています。
なおハザード比については、「(1)日本人のBMI」の<ハザード比(HR)とは>を参照して下さい。
今回は死因別(ガン、心臓病、脳血管疾患、およびその他の死因)による男性の死亡率とBMIの関係について、下のグラフを参考にしてご説明します。
また、女性の全死亡原因とBMIとの関係もさらに下のグラフを参考にしてご説明します。
結果5 -男性及び女性の死因別死亡リスクとBMIの関係-
結果5-1 <男性の死亡原因とBMIの関係:表2のBMIとハザード比の関係の解釈>
表2をグラフ化した下の図は、ガン、心臓病、脳血管疾患およびその他の死因のBMI23-25の死亡リスクを「1」とし、他のBMI区分の死亡リスクと比較したもので、このグラフから次の事が解ります。
1) 男性のガンによる死亡リスク(赤色四角◆)は、BMI23-25に比べBMI25-40でもハザード比の95%信頼区間からガンによる死亡リスクが高いとは言えず、BMI19-23以下でガンによる死亡リスクが上がっていました。
2) 男性の心疾患による死亡リスク(黄色の三角▶)は、BMI23-25のリスクに比べ、BMI21-23及びBMI26-30でも心疾患による死亡リスクが高いとは言えず、BMI30-40及びBMI19-21以下で心疾患による死亡リスクが上がると言えます。
・・・・「黄色の三角(心臓病)」の死亡リスクは、BMI27-30で上に示す通り1.3付近と高く見えますが、ハザード比の95%信頼区間は「1」をまたいでおり、高いと評価されません。
(ハザード比の95%信頼区間は、表2及び表3のハザード比の右横の()内の値です。)
3) 男性の脳血管疾患の死亡リスク(緑の三角)は、BMI23-25に比べ、BMI21-23及びBMI26-30で高いとは言えず、BMI30-40とBMI19-21以下で脳血管疾患による死亡リスクが上がっていました。
4) 男性のその他の死因(茶色の横向き三角)では、BMI23-40で、死亡リスクの増加はなく、BMI21-23以下でその他の死因による死亡リスクの増加が認められています。
結果5-2 <女性の死亡原因とBMIの関係:表3のBMIとハザード比の関係の解釈>
表3をグラフ化した下の図は、ガン、心臓病、脳血管疾患およびその他の死因のBMI23-25の死亡リスクを「1」として現し、他のBMIの死亡リスクと比較したもので、このグラフから次の事が解ります。
1) 女性のガンによる死亡リスク(赤色◆)は、BMI23-25に比べると、BMI14-30までの範囲ではリスクの増加はなく、BMI30-40でガンによる死亡リスクの増加が認められています。
2) 女性の心疾患による死亡リスク(黄色の三角)は、BMI19-30で変化はなく、BMI30-40とBMI14-19で心疾患による死亡リスクの増加が認められています。
3) 女性の脳血管疾患による死亡リスク(緑色の三角)は、BMI19-30で基準としたBMI23-25と差がなく、BMI30-40及びBMI14-19で脳血管疾患による死亡リスクの増加が認められています。
4) 女性のその他の死因による死亡リスク(茶色の三角)は、BMI23-30で変化がなく、BMI30-40及びBMI21-23以下でその他の死因による死亡リスクの増加が認められています。
男女別死因とBMIの関係のまとめ
男女それぞれの死因別死亡リスクとBMIの関係を科学的に明らかにした点で、素晴らしい調査報告であると思います。
現在、特定健診で基準とされているBMI18.5-25では、様々な疾患のリスクとBMIに関する情報の根拠は明かではありません。
病気による死因として頻度の高い心疾患及び脳血管疾患とガンの死亡リスクとBMIの関係を明らかにした調査研究の貴重なデータに基づいた基準値で生活習慣病の予防に役立てて頂きたいと思います。