辛い食べ物と寿命の関係 (3)辛い食べ物の摂取頻度と総死亡リスクの関係
辛い食べ物と寿命の関係 (3)辛い食べ物の摂取頻度と総死亡リスクの関係
前回は下記の報告の中で示されている表2の見方についてご説明させて頂きました。
今回は、「表2のデータや結果をどう解釈するか」についてご説明します。
タイトル:Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study
訳:「辛い食べ物の摂取頻度と全死亡率及び原因別死亡率の関係」
研究者:Jun Lv, associate professor,1 Lu Qi, associate professor,2,3 Canqing Yu,他。
公表雑誌:BMJ. 2015; 351: h3942.
研究機関:Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Peking University Health Science Center, Beijing 100191, People’s Republic of China
Department of Nutrition, Harvard School of Public Health, Boston, MA, USA
Channing Division of Network Medicine, Department of Medicine, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA
結果2 「辛い食べ物の摂取頻度」と「総死亡率及び原因別死亡率」の関係
<表2の結果の解釈>
ここで表2の解釈に入る前に、前回示した「モデル1~モデル3」のなかで、要因の偏りを最も厳しく調整したモデル3の死亡リスク(ハザード比)をこのサイトで解りやすく表現するために、「辛い食べ物の摂取頻度と死因別死亡リスク」として下にグラフ化しましたので、この図を使ってご説明させて頂きます。
上の図で、縦軸は「辛い食べ物の摂取頻度が週に1回未満の場合の死亡リスク」を「1」として現した相対的死亡リスクを示しています。
横軸は、「辛い食べ物の摂取頻度」を週に1回未満、1-2回、3-5回、6-7回に分け、その相対的な死亡リスクを現しています。
<1.辛い食べ物の摂取頻度とすべての原因による死亡率の関係>
・・・・・辛い食べ物を食べると総死亡リスクは下がる!
上のグラフの中で、「青色■」で示した曲線が、「辛い食べ物の摂取頻度と総死亡リスク」の関係を表しています。
直感的に理解できることは、「辛い食べ物の摂取頻度が増えると、死亡リスクが下がっていそう」に見えることです。
では、科学的に下がっていると言えるかどうかについては、表2に示されているハザード比が「1」未満で、その95%信頼区間が「1」をまたいでいない場合には、統計学的に死亡リスクが下がっていると言えます。
・・・・上のリンク先では、モデル1~モデル3のいずれのハザード比も「1」未満であり、95%信頼区間は「1」をまたいでいませんので、「辛い食べ物の摂取頻度が上がれば、総死亡リスクは下がる」と言えます。
<2.どれくらい死亡リスクは下がるの?>
「辛い食べ物の摂取頻度が上がれば、総死亡リスクは下がる」と上でご説明しました。
それでは、どれくらい総死亡リスクは下がるのでしょうか?
表2のモデル3のハザード比の95%信頼区間は次の通りです。
摂取頻度 モデル3のハザード比の95%信頼区間
週に1-2回 0.84 to 0.96
週に3-5回 0.80 to 0.92
週に6-7回 0.82 to 0.90
上に示したハザード比の95%信頼区間から、週に1-2回の摂取で、4-16%死亡リスクが下がり、
週に3-5回の摂取では、8-20%も死亡リスクが下がります。
そして週に6-7回では、10-18%の低下が期待できそうです。
この中で週に3-5回と週に6-7回とでは死亡リスクの低下には差がなさそうですので、辛い食べ物は週に1回未満の人に比べ、週に3-5回の摂取で約10%の死亡リスクを下げられそうです。
次回は、「辛い食べ物の摂取頻度と死因別死亡リスク」についてご説明します。