辛い食べ物と寿命の関係 (8)喫煙状態による男女別で辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
辛い食べ物と寿命の関係 (8)喫煙状態による男女別で辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
今回は、下の方法の2)で示した喫煙状態における辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係について男女別及び男女合計での解析結果についてご説明します。
タイトル:Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study
訳:「辛い食べ物の摂取頻度と全死亡率及び原因別死亡率の関係」
研究者:Jun Lv, associate professor,1 Lu Qi, associate professor,2,3 Canqing Yu,他。
公表雑誌:BMJ. 2015; 351: h3942.
研究機関:Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Peking University Health Science Center, Beijing 100191, People’s Republic of China
Department of Nutrition, Harvard School of Public Health, Boston, MA, USA
Channing Division of Network Medicine, Department of Medicine, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA
方法 年齢区分、喫煙状態、飲酒状態、身体活動量、BMIと辛い食べ物の摂取頻度の関係
週6日以上辛い食べ物を摂取して総死亡率に対するリスクを評価する際、男女別及び全体で次の区分分けで比較した。
1) 年齢:50歳未満、50-60歳未満、60歳以上
2) 喫煙状態:現在は禁煙、喫煙 ←・・・今回はこの部分について述べます。
3) 飲酒の状態:現在は禁酒、飲酒
4) 身体活動量:12.29メッツ未満、12.29-25.31未満、25.31以上。
5) BMI:24未満、24-28未満、28以上
結果8 喫煙状態による男女別で辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
結果8-1 <図2:男性の喫煙状態と総死亡リスクの比較>
上の図2で、上から3段目の太字が示す喫煙状態を抜き出し、下に図2-4として示しました(上の図をクリックするとリンク先に大きく表示されます)。
上の図で、青色の●印と横棒は、ハザード比とその95%信頼区間を意味します。
そして Not current(上の方)の●印と横棒は、禁煙者を意味し、
下の current の●印と横棒は、喫煙者のハザード比とその95%信頼区間です。
また、横に3つのハザード比と95%信頼区間が示されていますが、左から男性、女性そして全体(男女全体)を示しています。
この図2-4から、次の事が解ります。
<左側の男性では>
1) 男性では、禁煙しているヒトでも、喫煙しているヒトでも総死亡リスク(ハザード比)の95%信頼区間は、「1」をまたいでおらず、辛い食べ物を摂取することで死亡リスクが低下しています。
2) 交互作用のP値0.195は、喫煙状態であっても総死亡リスクには、余り影響していないことを意味しています。
<中央の女性では>
3) 女性(上の図の中央のデータ)では、上の禁煙者の総死亡リスク(ハザード比の95%信頼区間)は、「1」から大きく離れ、辛い食べ物の摂取で総死亡リスクの低下が著明である事が解ります。
4) 他方、女性の喫煙者のハザード比の95%信頼区間は、「1」をまたいでおり、総による死亡リスクの低下はありません。そしてこの95%信頼区間が幅広いことから、女性は辛い食べ物を摂取していても喫煙による総死亡における辛い食べ物摂取の感受性の違いが大きいと考えられます。
5) 交互作用のP値(禁煙女性と喫煙女性のグループ間の差)は、0.807で、まったく差が認められないことを示しています。
<全体(男女併せて。右端のグラフ)では>
6) 右端のハザード比の95%信頼区間は、禁煙者も喫煙者も「1」をまたいでおらず、全体としては死亡リスクの低下が認めらます。そしてその交互作用のP値から、禁煙者と喫煙者で死亡リスクに差がないと言えます。
・・・・男女全体としての結論は、禁煙者も喫煙者も総死亡のリスクは「1」をまたいでいないことから、一見、喫煙により死亡リスクが上がらないと思われるかもしれませんが、個々のデータ眺めれば、辛い食べ物を摂取する女性の総死亡リスクが明らかに低下していることは間違いありません。
<考察として>
a) 禁煙している男性の総死亡リスクが女性の禁煙者ほど小さくないのは、多くの喫煙している男性に囲まれて仕事をしている事が一因かも知れません。
b) また、男性の禁煙者の総死亡リスクがそれほど大きくないのは、仕事中における喫煙時間が影響しているかも知れません。