辛い食べ物と寿命の関係 (9)飲酒状態による男女別辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
辛い食べ物と寿命の関係 (9)飲酒状態による男女別辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
今回は下記の報告から、下の方法の3)に焦点を絞り、「男女別に飲酒状態の違いで辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係」について見ていきましょう。
タイトル:Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study
訳:「辛い食べ物の摂取頻度と全死亡率及び原因別死亡率の関係」
研究者:Jun Lv, associate professor,1 Lu Qi, associate professor,2,3 Canqing Yu,他。
公表雑誌:BMJ. 2015; 351: h3942.
研究機関:Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Peking University Health Science Center, Beijing 100191, People’s Republic of China
Department of Nutrition, Harvard School of Public Health, Boston, MA, USA
Channing Division of Network Medicine, Department of Medicine, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA
方法 年齢区分、喫煙状態、飲酒状態、身体活動量、BMIと辛い食べ物の摂取頻度の関係
週6日以上辛い食べ物を摂取して総死亡率に対するリスクを評価する際、男女別及び全体で次の区分分けで比較した。
1) 年齢:50歳未満、50-60歳未満、60歳以上
2) 喫煙状態:現在は禁煙、喫煙
3) 飲酒の状態:現在は禁酒、飲酒 ←・・・今回はこの部分についてご説明します。
4) 身体活動量:12.29メッツ未満、12.29-25.31未満、25.31以上。
5) BMI:24未満、24-28未満、28以上
結果9 飲酒状態による男女別で辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
<図2で示されている飲酒のサブグループについて>
上の図2で、上から5段目の太字が示す「飲酒の状態」を抜き出し、下に図2-5として示しました(上の図をクリックするとリンク先に大きく表示されます)。
上の図で、青色の●印と横棒は、ハザード比とその95%信頼区間を意味します。
そして Not current(上の方)の●印と横棒は、禁酒者群を意味し、
下の current の●印と横棒は、飲酒者群のハザード比とその95%信頼区間です。
また、横に3つのハザード比と95%信頼区間が示されていますが、左から男性、女性そして全体(男女全体)を示しています。
この図2-5から、次の事が解ります。
結果9-1 <図2:男性の飲酒の状態と総死亡リスクの比較>
1) 男性では、禁酒しているヒトにおける総死亡リスク(ハザード比)の95%信頼区間は、「1」をまたいでおらず、辛い食べ物を摂取することで死亡リスクが大きく低下しています。
2) 他方、飲酒している男性の総死亡リスクの95%信頼区間は、「1」をまたいでおり、死亡リスクの低下は認められません。
3) 交互作用のP値0.050は、禁酒状態のヒトの総死亡リスクは、飲酒したヒトに比べて明らかに死亡リスクが低下していると結論付けられます。
・・・・加えて、禁酒したヒトが飲酒したヒトと同じ総死亡リスクに至る確率は0.050(5%)以下であるとも言えます。
結果9-2 <図2:女性の飲酒の状態と総死亡リスクの比較>
<女性>
4) 女性(上の図の中央のデータ)では、上の禁酒者の総死亡リスク(ハザード比の95%信頼区間)は、「1」から大きく離れ、辛い食べ物の摂取で総死亡リスクの低下が著明である事が解ります。
5) 他方、女性の飲酒者におけるハザード比の95%信頼区間は、「1」をまたいでおり、辛い物を摂取しても飲酒していれば総死亡リスクの低下はありません。
そしてこの95%信頼区間が幅広いことから、女性は辛い食べ物を摂取していても飲酒による感受性の違いが大きいと考えられます。
6) 交互作用のP値(禁酒女性と飲酒女性のグループ間の差)は、0.514で、まったく差が認められないことを示しています。その理由は、女性の飲酒者におけるデータのバラツキが大きい事が原因と考えられます。
結果9-3 <図2:男女全体の飲酒の状態と総死亡リスクの比較>
<全体(男女併せて)>
7) 右端のハザード比の95%信頼区間は、禁酒している男女全体のハザード比の95%信頼区間は「1」をまたいでいませんので、総死亡リスクを下げています。
8) 他方、飲酒者のハザード比の95%信頼区間は「1」をまたいでおり、全体としては死亡リスクの低下は認められません。
そしてその交互作用のP値0.033から、男女全体における禁酒者と禁酒者の死亡リスクには、差があると言えます。