辛い食べ物と寿命の関係 (10)身体活動量による男女別辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
辛い食べ物と寿命の関係 (10)身体活動量による男女別辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
今回は下記の報告から、下の「方法の 4)身体活動量」 に焦点を絞り、「男女別に身体活動量の違いで辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係」について見ていきましょう。
タイトル:Consumption of spicy foods and total and cause specific mortality: population based cohort study
訳:「辛い食べ物の摂取頻度と全死亡率及び原因別死亡率の関係」
研究者:Jun Lv, associate professor,1 Lu Qi, associate professor,2,3 Canqing Yu,他。
公表雑誌:BMJ. 2015; 351: h3942.
研究機関:Department of Epidemiology and Biostatistics, School of Public Health, Peking University Health Science Center, Beijing 100191, People’s Republic of China
Department of Nutrition, Harvard School of Public Health, Boston, MA, USA
Channing Division of Network Medicine, Department of Medicine, Brigham and Women’s Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA, USA
方法 年齢区分、喫煙状態、飲酒状態、身体活動量、BMIと辛い食べ物の摂取頻度の関係
週6日以上辛い食べ物を摂取して総死亡率に対するリスクを評価する際、男女別及び全体で次の区分分けで比較した。
1) 年齢:50歳未満、50-60歳未満、60歳以上
2) 喫煙状態:現在は禁煙、喫煙
3) 飲酒の状態:現在は禁酒、飲酒
4) 身体活動量:12.29メッツ未満、12.29-25.31未満、25.31以上。 ←・・・今回はこの部分について述べます。
5) BMI:24未満、24-28未満、28以上
「身体活動量」について復習しておきましょう
「適度な運動 (5)身体活動量の評価」の(A) 現在の身体活動量の評価 で、次の様に述べました。
「一週間における身体活動量の目標は23エクササイズ、運動量の目標は4エクササイズです。」
この18~64歳の身体活動量の目標23 エクササイズ、運動量の目標4エクササイズは、「健康づくりのための運動指針2006(エクササイズガイド)」の7ページにある「(1)身体活動量の目標」に基づいていますが、あくまで1つの基準に過ぎません。
それぞれの体力や運動経験、持病の状態やライフスタイルによっても異なります。
そしてあくまでもここで述べる「身体活動量の違いに基づき、辛い食べ物の摂取が総死亡リスクにどう影響しているか?」を考える上での目安とお考え下さい。
次に、「(2)運動量の単位メッツとは」の「(B) 運動量の単位 エクササイズとは」で示した以下の点をご確認下さい。
エクササイズ=メッツ×時間
その例として、
3メッツの身体活動を1時間行った場合:3メッツ× 1時間=3エクササイズ(メッツ・時)
6メッツの身体活動を 30 分行った場合 :6メッツ×1/2時間=3エクササイズ(メッツ・時)
なお、身体活動量の詳細は、「適度な運動・歩行速度と寿命・暑いときの運動 まとめ」を参照して頂きたいと思います。
結果10 身体活動量の状態による男女別辛い食べ物の摂取と総死亡リスクの関係
結果10-1 <図2:身体活動量の状態と総死亡リスクの関係>
<図2で示されている身体活動量のサブグループについて>
上の図2で、上から5段目の太字が示す身体活動量の状態を抜き出し、下に図2-6として示しました(上の図をクリックするとリンク先に大きく表示されます)。
上の図で、青色の●印と横棒は、ハザード比とその95%信頼区間を意味します。
そして上図に示されている身体活動量の単位は、(MET h/day)と記されていますので、一日当たりの「MET×h」(1日当たりのメッツ×時間)を示していますので、上の{ 「身体活動量」について復習しておきましょう} で述べた「エクササイズ」を意味しています。
すなわち、一日当たりのエクササイズ量を示していると思われます。
この報告では身体活動量を次の3つのサブグループに分類して、各グループで辛い食べ物を摂取した結果、総死亡リスクがどう違っていたかを現しています。
・・・・3つのグループは、次の通りです。
① 一日当たり12.29エクササイズ未満、
② 12.29~25.31エクササイズ未満、
③ 25.31エクササイズ以上です。
・・・・この運度量は、厚労省の目標(週23エクササイズ)に比べるとかなり多いように思いますが、私の理解が間違っているとお気づきの際は、ご連絡頂きたいと思います。
結果10-2 <辛いものを摂取した男女サブグループの身体活動量による総死亡リスクについて>
上の「結果10-1」で示した図2-6で左側に示された「辛いものを食べた男性の身体活動量●印と横棒は、身体活動量が ①12.29エクササイズ未満/日 を意味し、
その下の●印と横棒は、身体活動量②12.29~25.31エクササイズ未満/日のハザード比とその95%信頼区間です。
さらに下のサブグループは、身体活動量が③25.31エクササイズ以上/日のハザード比とその95%信頼区間を表しています。
また、横に3つのハザード比と95%信頼区間が示されていますが、左から男性、女性そして全体(男女全体)を示しています。
この図2-6から、次の事が解ります。
<男性(上の左側のグラフで)>
1) 男性では、上に示した「②12.29~25.31エクササイズ未満/日」の身体活動量でのみ総死亡リスクのハザード比とその95%信頼区間が「1」をまたいでおらず、総死亡リスクが低下していました。
2) 他のサブグループ①と③の身体活動量のハザード比の95%信頼区間は、「1」をまたいでおり、辛い食べ物を摂取しても総死亡リスクが低くないことを意味しています。
3) 交互作用のP値0.527は、男性の身体活動量の分類で総死亡リスクに差があるとは認められないことを意味していると考えられます。
・・・・すなわち、男性では適度な運動と辛い食べ物の摂取で総死亡リスクが減った事を意味しています。
<女性(上の中央のグラフで)>
4) 女性では、上に示した身体活動量の多少に関わらず、総死亡リスクは低下していました。
5) 女性の身体活動量の違いによる交互作用のP値0.221は、身体活動量の違いによって総死亡リスクが影響しているとは考えられません。
・・・・すなわち、女性では運動量と辛い食べ物の摂取は総死亡リスクには何ら影響していないことを意味します。
<男女全体(右側のグラフで)>
6) 男女全体では、身体活動量の多少に関わらず、総死亡リスクが低下していました。
7) 男女全体の身体活動量の違いによる交互作用のP値0.258は、身体活動量の違いによる総死亡リスクに差がないことを示しています。
・・・・男女全体では、辛い食べ物の摂取と身体活動量は、総死亡リスクを低下させる傾向を見せて入るものの、統計的には影響していません。
<私見による考察>
男性の身体活動量が最も多い③のグループの総死亡リスクのハザード比の95%信頼区間が「1」をまたいでいることは、その運動量では辛い食べ物を摂取しても総死亡リスクが下がっていません。
この点については、運動量が多すぎることで総死亡リスクが下がらないことを示しています。
・・・・運動も過剰な負荷はマイナス効果なのでしょう。