タバコは一日1本でも死ぬか? (4)一日1~10本未満の喫煙による死亡リスク
前回の「(3)一日1本未満の喫煙における死亡リスク」では、一日1本未満の喫煙による死亡リスクについて、下の報告からご説明しました。
今回は、一日の喫煙本数が1〜10本未満の喫煙による死亡リスクのデータを一緒に見て行きましょう。
タイトルAssociation of Long-term, Low-Intensity Smoking With All-Cause and Cause-Specific Mortality in the National Institutes of Health-AARP Diet and Health Study.
訳:「国立衛生研究所-全米退職者協会食事における長期、少量の喫煙による総死亡率と原因別死亡率の関係」
研究者:Inoue-Choi M, Liao LM, Reyes-Guzman C, Hartge P, Caporaso N,他。
研究機関:Division of Cancer Epidemiology & Genetics, National Cancer Institute, National Institutes of Health, Rockville, Maryland.アメリカの国立ガン研究所、ガン疫学と遺伝部門
Office of Science, Center for Tobacco Products, US Food and Drug Administration, Silver Spring, Maryland.米国食品医薬品局(FDA)、タバコ製品センター科学局
公表雑誌:JAMA Intern Med. 2016 Dec 5. doi: 10.1001/jamainternmed.2016.7511.
結果3 一日1-10本未満のヒトの総死亡リスクと死因別死亡リスク
さて今回は、一日1-10本の喫煙による死亡リスクを禁煙者と比較した部分を表2から見ていきましょう。

1) 上の表2の下の赤枠の部分が一日1-10本未満の喫煙者の人数6627人、総死亡数1360人とハザード比2.6及びハザード比の95%信頼区間2.45-2.75が示されています。
・・・・この結果は、禁煙者に比べ一日1〜10本の喫煙者の総死亡リスクが2.6倍である事を証明しています。
2) 同様に「All Cancer(全ガン)の死亡数は522人、そのハザード比は2.83で、ハザード比の95%信頼区間は2.58-3.11でした。
・・・・この結果は、禁煙者に比べ一日1〜10本の喫煙者の喫煙者がガンで亡くなるリスクは2.8倍である事を証明しています。
3) 同様にLung Cancer(肺ガン)の死亡リスクは禁煙者の何と18.38倍、心血管疾患は2.13倍、呼吸器疾患は11.04倍である事を示しています。
4) 以下同様に、一日11-20本以下、21-30本以下、一日30本以上の総死亡リスク及び疾患別死亡リスクが示されています。
結果4 喫煙がコンスタントな喫煙と非コンスタントな喫煙における喫煙本数と死亡リスクの関係
この「コンスタントな喫煙と非コンスタントな喫煙における喫煙本数と死亡リスクの関係」に関する結果は、上に示した表2のデータのさらに下部に示されていますので参照して頂きたいと思います。
ここでの解説は省略させて頂きます。
結果5 過去の喫煙で一日1本未満と1-10本の場合の死亡リスクの比較
この「過去の喫煙で一日1本未満及び1-10本の喫煙歴があるヒトの死亡原因別死亡リスク」の結果は、表3に示されていますので、参照して頂きたいと思います。
このサイトでの説明は省略させて頂きます。
<私見>
上記の研究報告についての内容紹介は、今回で終わりますのでポイントを整理しておきます。
これまでに示した「(3)一日1本未満の喫煙における死亡リスク」と今回の「(4)一日1~10本未満の喫煙による死亡リスク」の結果から、喫煙に関しては次のことが明らかにされたと考えられます。
1) 一日1本未満の喫煙による原因別死亡リスクは、禁煙者に比べ
全死亡リスクで、1.99倍、
全ガンで、1.91倍、
肺ガンで、10.73倍、
心血管疾患で、1.71倍、
呼吸器疾患で、6.38倍であることが明らかにされました。
2) 上に示した「(4)一日1~10本未満の喫煙による死亡リスク」から、一日1〜10本未満の喫煙による原因別死亡リスクは、禁煙者に比べて
全死亡リスクで、2.60倍、
全ガンで、2.93倍、
肺ガンで、18.83倍、
心血管疾患で、2.13倍、
呼吸器疾患で、11.04倍であることが明らかにされました。
3) さらに、上の表2から、一日の喫煙本数が21本以上の肺ガンによる死亡リスクは、禁煙者の30倍を超えています。
いずれにしろ、喫煙が寿命に影響している事は明らかです。
加えて、喫煙に伴う副流煙による周囲の人達にも健康上の不利益を及ぼしている可能性も指摘されていますので、喫煙の基本は次の通りではないでしょうか。
「吸った煙は吐き出さない。」または「周りに人がいないところで吸う。」ことで、喫煙しないない人の寿命まで巻き込まないことです。他人に迷惑をかけない生き方をして下さい。