DPT三種混合ワクチン
DPT三種混合ワクチン
DPT三種混合ワクチン:ジフテリア、百日咳、破傷風の三種類のワクチンは、トキソイドと不活化の混合ワクチンです(ジフテリアと破傷風はトキソイド、百日咳は不活化ワクチンで構成されます)。
ジフテリア(Diphtheria)、百日咳(Pertussis)、破傷風(Tetanus)の頭文字をとってDTPワクチンと言います。
接種期間:3ヶ月以上7歳6ヶ月未満のお子さんを対象に市指定の予防接種委託医療機関で実施しています。
接種方法
第1期の3回接種は、生後3カ目から1才までの間に20日から56日までの間隔で3回接種します。
3回目を接種後、1年から1年6ヶ月の間隔で第1期追加を1回接種します(計4回)。
赤ちゃんの時に基礎免疫をつければ、一定の年数をおいて追加接種をすることで免疫力を維持することができます。
II期の接種は、小学校6年時に百日咳ワクチンを除いた二種混合ワクチンを接種します。
持ち物:母子健康手帳、予防接種予診票。
3種類の病気の説明
ジフテリア
ジフテリア菌から産生されるタンパク成分のジフテリア毒素が感染細胞のタンパク合成を抑制する事により感染部位の細胞変性や壊死を起こす上気道粘膜の感染症。
潜伏期間:通常1週間程度。
症状:喉の痛み、犬がほえるような咳、筋力低下、激しい嘔吐。約39.5℃までの発熱。窒息、神経麻痺、失明。
治療:ジフテリア毒素に対する抗血清及び抗生物質の使用。
ワクチン:トキソイド。
備考:ジフテリア菌の発見はベーリングと北里柴三郎によるもので、彼らは血清療法の開発も行ったが、ノーベル医学生理学賞はベーリングしか選ばれなかった。
百日咳
百日咳菌による呼吸器感染症。痙攣性の咳発作を特徴とする急性気道感染症で、回復までに3ヶ月を要することから、百日咳と呼ばれるようになった感染症です。
症状:夜間の咳発作。咳発作時には嘔吐、チアノーゼ、無呼吸、顔面紅潮・眼瞼浮腫(百日咳顔貌)、結膜充血の症状が見られ、尿失禁、肋骨骨折、失神も見られる。発作による体力消耗は激しく、不眠や脱水、栄養不良等が著しい場合は入院治療が必要。
百日咳診断基準は、「14日以上の咳」と、「発作性の咳込み」「吸気性笛声」「咳込み後の嘔吐」の何れかの特徴的な症状を有する場合。
確定診断:鼻咽頭粘液中の百日咳菌の分離または、後日に行う百日咳菌に対する抗体の検出と治療完了数ヶ月後に行う抗体価の低下を確認する。
ワクチン:百日咳菌からも毒素が産生され、百日咳トキソイドを用いたワクチンも研究・開発されつつありますが、現在は不活化ワクチンです。
破傷風
破傷風菌を病原体とする人獣共通感染症です。 破傷風菌は土の中で酸素がなくても生存できる嫌気性菌です。 この菌が傷口から体内に侵入することで感染を起こします。
傷があるのに土いじりいれば誰もが感染し、発症する可能性はあります。
症状:破傷風菌の毒素は、神経毒であるテタノスパスミンと溶血毒であるテタノリジンの二種類を産生します。テタノスパスミンは、脳や脊髄の運動抑制ニューロンに作用し、重症の場合は全身の筋肉麻痺や強直性痙攣をひき起こします。 この作用は、北里柴三郎により世界で初めて発見され、トキソイド療法の開発も行いました。
潜伏期間:感染から発症までの潜伏期間は3日~3週間と比較的短い。神経毒による症状が激烈である割に、作用範囲が筋肉に留まるため意識混濁は無く鮮明である場合が多い。このため患者は、死に至るまで症状に苦しめられます。
破傷風の死亡率は50%である。成人でも15~60%、新生児に至っては80~90%です。
治療:破傷風菌に対する抗生物質の投与が行われますが、体内の毒素に対しては、抗生物質は効きません。毒素の中和には破傷風免疫グロブリンを用いる。破傷風は治っても免疫が形成されないので、回復後に破傷風の予防接種を受ける必要があります。
ワクチン:トキソイド
用語説明
トキソイドとは
トキシン(毒素)を変成させて、毒性をなくし、抗体を作らせるものをトキソイドと言います。
細菌が菌の外部に産生する(外)毒素をホルマリンなどの化学薬品で処理することにより、 毒素としての作用を無くしたけれども、毒素の形を保つことで、毒素に対する抗体産生能力を保ち(免疫原性を有し)、毒素を中和できる抗体産生を誘導できるようにしたものを言います。
細菌感染そのものよりも、感染の結果、産生される毒素の作用が強い菌に対するワクチンとしてトキソイドが利用されます。 例えば、ジフテリアと百日咳は、どちらも呼吸器感染症ですが、感染の結果、主に呼吸器症状が中心の百日咳に対して、ジフテリアは、呼吸器症状以外の神経麻痺などの重篤な症状を引き起こします。この作用はジフテリア菌の感染による直接的な症状ではなく、ジフテリア菌が産生する毒素によるものであることから、毒素の作用を免れるために作られたワクチンがトキソイドと言われるワクチンです。