食品添加物 (63)シナモンが苦みを消す理由
食品添加物 (63)シナモンが苦みを消す理由
シナモンは、ニッキあるいは桂皮(ケイヒ)とも呼ばれる香辛料です。
その特徴的な芳香成分はシンナムアルデヒド、オイゲノール、サフロール によるものです。
(A)シンナムアルデヒド(下図の化学構造)
シナモンの香りの原因物質で、淡黄色の粘性のある液体です。
香料としてチューインガム・アイスクリーム・キャンディ・清涼飲料などに使われています。
他方、殺菌剤としての用途もあり、主に根の殺菌に有効であることが確認されています。
毒性が低い性質から、農薬としては安心して使え、殺虫剤としても使用されます。
←シナモンの香り成分であるシンナムアルデヒド
(B)カテキンとプロシアニジン ・・・・シナモンに関連しそうにありませんが、あとで関連が出ます。
<カテキン>
カテキンは、すでに下記のリンク先でも出てきましたので、参照しておいてください。
医者を青くするもの (101)蓮6 -レンコン5- ・・・レンコンに含まれる下図の二つのカテキンが重合し、「ターミネーター」のようなポリフェノールを構成していました。
このカテキンは、お茶の渋み成分としても知られており、ポリフェノールオキシダーゼにより酸化され、重合してタンニンに変えられます。このタンニンが渋味を感じさせます。
もう一歩突っ込むなら、お茶カテキンの主要成分は、エピカテキンと、水酸基が付いたエピガロカテキンです。
←エピカテキン
←エピガロカテキン
<プロシアニジン>
プロシアニジンは、すでにこのサイトで下記の箇所で紹介させて頂きました。
その作用は次の通りですので、この機会に見直していたければ幸いです。
←プロシアニジン
医者を青くするもの (109)蓮14 -蓮の実8-・・・アセチルコリンエステラーゼ活性阻害により、認知症改善。アリセプトと同じような作用です。
医者を青くするもの (116)蓮21 -蓮の実15-・・・活性酸素から神経細胞を保護し、認知症を改善。
<カテキンとプロシアニジン>
カテキンとプロシアニジンは、いずれも抗酸化物質として注目され、ブドウ種子、松樹皮、リンゴ未熟果実などに由来するものが食品や化粧品成分として利用されてきています。
下図右側の化学式・プロアントシアニジンの化学構造は、「青色の楕円で囲んだカテキン」がつながったものです。
←プロシアニジンも2つのカテキンからなる重合体です。
通常、プロシアニジンのポリマーはカテキンそのもの(単量体)や、二量体、三量体などと共存しています。
ここでは、プロアントシアニジンもプロシアニジンもほぼ同じカテキンの重合体とお考えください。
(C)シンナムアルデヒドが苦みを消す理由
さて、下図左上のシンナムアルデヒドの化学構造と
下図左下のエピカテキンの化学構造は、シナモンに含まれる(下図右下の化学構造の)「プロシアニジン」中に含まれています。
赤色四角で囲んだシンナムアルデヒド構造2分子と、青色楕円で囲んだエピカテキンン構造2分子から構成されている事が解ります。
従って、赤色四角のシンナムアルデヒドが青丸のエピカテキンの分子間をつないで非常に大きい集合体の構成に橋渡し役として参加していることが解ります。
加えて、シンナムアルデヒドのアルデヒド構造(-CHO)が、タンニンと反応することで、柿の渋味やお茶の苦みを無くするメカニズムに関連していると考えられます。
(参照:柿だけではなかった:プロアントシアニジンとアルデヒドの反応)
医者を青くするもの (6)渋柿と甘柿 −渋味の正体は?− ・・・リンク先の(B)に次の様に説明しました。「アセトアルデヒドが柿のタンニンに結合し、難溶性のタンニン(縮合性タンニン)に変化させることで、渋味を感じなくなります。」
その結果、コーヒーの苦みに対してシナモンが短時間でも作用するなら、苦みを和らげている可能性が考えられそうです。