床ずれ (1)床ずれとは
床ずれ (1)床ずれとは
「床ずれ」は、高齢者介護の分野のことと考えやすい「身体所見」の一つです。
しかし、高齢者ではなくとも長期療養者や身体障害者、あるいは事故後に身体を安定させる姿勢や体位の保持が長引くと「床ずれ」を生じることがございます。
一見、軽く見てしまいがちな「床ずれ」ですが、身体の深部にまで床ずれが達するなら、その治療は容易ではなくなるだけでなく、生命にも関わる危険性が潜んでいます。
従って、床ずれを正しく理解し、「ひどい状態の床ずれ」になる前に、より早期に適切な対処をするだけでなく、日頃の生活状態から気を配るよう考えて頂きたいと思います。
このシリーズを通して、ご一緒に床ずれについての概要をつかみ、早期に発見できる事を目指したいと思います。
(A)「床ずれ」とは
寝たきりの高齢者や長期の入院で身体をほとんど動かすことが困難な場合などでは、一般的に「床ずれ」、医学用語では「褥瘡(ジョクソウ)」と言う状態を招きます。
この「床ずれ」は、看護や介護の分野では「褥創(ジョクソウ)」と言う用語を使っていますが、同じ事を指しています。
どちらでも良いので、ここでは一般的な「床ずれ」で話を進めます。
(B)「床ずれ」の原因
床ずれの原因は、寝たきりなどによる持続的な圧迫です。
圧迫によって血が通わなくなり、組織が死んで(壊死して)キズになったものを床ずれと呼びます。
この時の持続的な圧迫は、病気、低栄養、身体機能障害等が原因で、日常の生活活動が低下し、圧迫を受け続けた部位の血流低下の結果として組織が壊死(えし)してしまうことで「床ずれ、褥瘡」が引き起こされます。
壊死状態を放置すると感染が全身状態を悪化させて死に至る可能性が高いとされています。
健康な人の場合には、無意識のうちに眠っている間は寝返りをうち、長時間椅子に座っているときはお尻を浮かせるなどして、同じ部位に長い時間、圧迫が加わらないようにしています。
このような動作を「体位変換」といいます。
しかし自力で体位変換できない方は、体重で長い時間、圧迫された皮膚の細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなることで、「褥瘡」ができます。
(C)「床ずれ」になるのはどんなとき?
自分で体位変換ができない。
長期間寝たきり。
栄養状態が悪い。
皮膚が弱くなっている(高齢者、排泄物や汗により皮膚がふやけたままにされる。)
むくみが強い。
抗がん剤やステロイドなどの薬の副作用で免疫力が低下している。
圧迫だけでなく摩擦や皮膚のズレなどの刺激が繰り返されている場合も褥瘡になりやすい。
褥瘡になりやすいため注意しなければならない病気として、心不全、骨盤骨折、脊髄損傷、糖尿病、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患などです。
次回は、「床ずれの見極めかた」についてご説明させて頂きます。