床ずれ (4−3)栄養改善
床ずれ (4-3)栄養改善
以前ご説明させて頂きました「(4)床ずれの防止」では、床ずれ防止の三原則として、次の3点を示しました。
1)体位交換で同じ部位の圧迫をさける・・・「(4-1)体圧分散マットレス」
2)清潔を保ち、刺激をさける ・・・・・・「(4-2)清潔の保持」
3)全身の栄養状態をよくする ・・・・・・「(4-3)栄養改善」
今回は、上記の内、「3)栄養改善」について考えてみましょう。
3) 栄養改善
「床ずれ」に限らず、病気の治癒と予防には栄養素をバランスよく摂る事が重要です。
食べる意欲のある人は、代謝も活発で治りが早いと言う指摘は、「床ずれ」に関しても当てはまると考えられます。
a)栄養状態を評価する2つの方法 ・・・栄養状態の評価(アセスメント)には、次の2つがございます。
(1)主観的な評価法(主観的包括的栄養評価:subjective global assessment:SGA、下図を参照下さい。下図は日本褥瘡学会から引用。)
(2)客観的な評価法:栄養指標といわれる各種身体計測値や血液生化学的検査値などが用いられます。
また必要なエネルギーや各種栄養素が欠乏した状態を低栄養といい、褥瘡発生のリスクが高まる傾向にあります。
低栄養には、次のような問題が指摘されています。
(1)エネルギーと蛋白質が欠乏したマラスムス型では、体重の減少が現れます。
(2)エネルギーは十分だが蛋白質が欠乏したクワシオルコル型では、足の浮腫と腹部の膨張、感肥大が現れます。
(3)双方の中間型であるマラスムス型クワシオルコル型に大別されています。
身体計測と血液検査
体重や身長から割り出される肥満度。上腕三頭筋皮脂厚、上腕周囲長、大腿周囲長なども計測、血清アルブミン濃度・窒素バランス・リンパ球数の検査などを行います。
<窒素バランスとは摂取した蛋白質の含有窒素量と、体外に排泄された総窒素量の差です。栄養レベル・カウント値なども利用されます。>
血清アルブミン濃度から栄養状態評価
3.5g/dℓ以上…栄養状態は良好です。
3.0g/dℓ以下…栄養状態はやや不良で、床ずれ発症が多くなります。
2.5g/dℓ以下…栄養状態は不良で、床ずれ発症が非常に多くなります。
b)褥瘡予防に必要な栄養素と必要量
褥瘡発生を予防するためには、低栄養状態を改善するだけの必要栄養量の投与を行います。
必要栄養量の算出は、次の様な方法がございます。
(1)一般的にはハリス・ベネディクトの式を用いる方法、
(2)栄養レベル・カウント値
c)栄養素の役割 ・・・簡単に整理しておきます。
摂取カロリー:カロリー(エネルギー)が少ないと細胞増殖や蛋白合成ができません。
蛋白質・アミノ酸:創傷部での細胞増殖や蛋白合成には、材料としてアミノ酸(蛋白質)が必要です。
カロリーが充分摂れていても、アミノ酸が不足していると蛋白合成はできません。
ビタミン:ビタミンCはコラーゲンを作る時に消費されます。その他の蛋白質合成にも必須の栄養素がビタミンです。
微量元素:生体には次の元素が必要です。
鉄 :酸素を運ぶためのヘモグロビンの重要な構成成分です。
亜鉛:蛋白質合成(肉芽形成)に必要な微量元素で、蛋白質摂取に伴い亜鉛も摂取できます。
銅 :蛋白質合成(肉芽形成)に利用させる元素です。
d)水分 ・・・・なぜ高齢者は水分補給が必要か
高齢者にとって重要な「水分補給」の必要性についてまとめておきます。
<加齢とともに見られる、水分低下の原因>
1.水分を蓄える筋肉や皮下組織が減少し、体内の水分量が少なくなる
2.水分調節において重要な腎機能が低下し、老廃物を排出するための尿量が多くなる
3.身体の感覚が鈍くなり、のどの渇きも感じにくく、水分が必要でも気づきにくい
・・・・脱水症状にならないためには、意識的に定期的に水分を摂りましょう。
<参考> ・・・体組成計 インナースキャン BC-250 で体水分率を簡単に計測できそうです。