床ずれ (3)床ずれの評価
床ずれ (3)床ずれの評価 ・・・重症度分類
多くの専門職が褥瘡治療にかかわるようになったとき必要なのが、「褥瘡を評価する」ための共通のツールであり、褥瘡重症度の判断基準です。
しかしながら、海外の評価方法は、日本人の体格や生活習慣に合わない部分があったことから、日本褥瘡学会が開発した評価方法として「DESIGN®」が使われるようになりました。
他の褥瘡評価法には、
米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel: NPUAP)のステージ分類と
ヨーロッパ褥瘡諮問委員会(European Pressure Ulcer Advisory Panel: EPUAP)のグレード分類があります。
(A)褥瘡の深達度分類の比較 ・・・上に示したDESIGN-R、NPUAP、EPUAPの比較。
いずれの褥瘡の分類や評価方法でも、ほぼ同様のように思われますが、患者さんの状態は、患者さん自身の背景となる疾患の有無や重症度、栄養状態によっても褥瘡の進行速度は異なりますので、いずれの評価方法でもどう治療していくかが課題です。
「3つの褥瘡の重症度分類」については、褥瘡の深達度分類の比較を参照して下さい。
ここでは、日本褥瘡学会が考案したDESIGN-Rについて、簡単に触れておきます。
(B)「DESIGN-R」……床ずれ(褥瘡)の客観評価ができる指標
日本褥瘡学会は、2002年に深さ(D)、浸出液(E)、大きさ(S)、炎症(I)、肉芽(G)、壊死組織(N)、ポケット(P)の7項目からなる、褥瘡の評価ポイント(DESIGN)を発表し、2008年には、これらの項目に重み付け(Rating)を行い、症例間の比較も可能にする評価方法として「DESIGN-R」を考案しました。
Depth(床ずれの深さ)
Exdate(浸出液)
Size(褥瘡の大きさ)
Inflammation/Infection(炎症/感染)
Granulation(床ずれの肉芽組織)
Necrotic tissue(褥瘡の壊死組織)
Pocket(褥瘡のポケット)・・・ポケット(写真にご注意ください)とは「皮膚欠損部よりも広い創腔」のことで、皮下に深く広く広がっている場合を言います。
Rating(重み付け)
・・・・これらをそれぞれ詳しく評価して床ずれの重症度を判断することで適切な治療に結びつけることを目的としています。
すなわち、深さ以外の7項目の評価ポイントの合計を調べ、0~66点で評価されます。
一般的に強い圧とズレにより骨突出部に発生した褥瘡の場合、皮膚よりも深部の骨周囲に広範囲に壊死を生じます。
この壊死組織がなくなると,ポケットを有する創となります。これを初期型ポケットと呼びます(リンク先のBの写真)。
もしこのポケット内全面に肉芽(リンク先の「赤色期」)が形成されれば,肉芽の収縮によりポケットは縮小し,いずれは消失するはずです。
しかし実際にはこのうちの一部がポケットとして残存し、なかなかよくならない状態となった場合が遅延型ポケット(リンク先のCの写真)です。
・・・・上記リンク先の説明にある「デブリードマン」とは、壊死組織を除去して創を清浄化する治療法。創面切除を意味します。
これは創傷治癒の観点から見ますと、正常な肉芽が形成されなかった部位がポケットとして残ってしまったと考えることができます。
そして実際、慢性化したポケット内には白っぽい膜様組織が存在し,良性肉芽は認められません。
また、DESIGN-Rでは、こちらの表に基づいて重症度を評価します。
上の表で、深さ以外の6項目(滲出液、大きさ、炎症/感染、肉芽組織、壊死組織、ポケット)の合計点の0点〜66点までの合計点がその褥瘡の重症度を表します。
より具体的な評価は、写真付きのこちらのサイトを参照して下さい。
そして、DESIGN-Rによる実際の褥瘡の評価は、こちらのように0~66点で評価されます。
上のリンク先では、3例の褥瘡評価が示されています。
(C)褥瘡治療法の種類 ・・・褥瘡にはさまざまな病態・病期が存在するため、それぞれの状態を見極めた上で最も適切な治療方法を選択することが重要です。
上のリンク先では、外用薬、ドレッシング材、外科的治療、物理療法に分類されており、いずれの方法も「褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)」にまとめられていますが、読むのが大変です。
「DESIGN-R」の褥瘡評価に基づいて、治療が進められますが、治療の経過や効果についても「DESUGN-R」で再評価を繰り返しながら、治療前後で重症度が改善しているかどうかを客観的に評価する事も出来ます。
DESIGN-Rに準拠した外用薬とドレッシング材の使い分けについては、こちらのリンク先に簡潔にまとめられています。
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