床ずれ (8)古田法遵守による褥瘡治療評価1
床ずれ (8)古田法遵守による褥瘡治療評価1
今回から褥瘡治療法として注目されている「古田法」の有効性を検証した下記の調査報告をご紹介させて頂きたいと思います。
タイトル:Active topical therapy by “Furuta method” for effective pressure ulcer treatment: a retrospective study
訳:「効果的な褥瘡治療のための「古田法」による局所療法:後ろ向き研究」
研究者:Katsunori Furuta, Fumihiro Mizokami, Hitoshi Sasaki, and Masato Yasuhara
研究機関:Department of Clinical Research and Development, National Center for Geriatrics and Gerontology, 国立長寿医療研究センター、臨床研究開発部門
Department of Pharmacy, National Center for Geriatrics and Gerontology, 薬学部
公表雑誌:J Pharm Health Care Sci. 2015; 1: 21. Published online 2015 Jul 16. doi: 10.1186/s40780-015-0021-8
背景
身体の骨隆起部に持続的な圧力が加えられると毛細血管の血流が妨げられ、組織壊死を引き起こす事で褥瘡(床ずれ)を発症します。
この褥瘡の主な原因は、せん断力(ハサミ切る力)を含む外圧により虚血性変化を生じます。
他にも、高齢者が体位変換出来ないだけでなく、栄養状態の悪化、及び体重減少が褥瘡発症のリスクを上げていることも指摘されています。
褥瘡の治療が困難な原因は、褥瘡の深部でポケットが形成された場合です。
・・・「ポケットとは」:創周囲の皮膚の下に広がる組織の破壊により生じた腔を言います。
このような治療困難な褥瘡は、老化に伴ない身体的な創傷の変化で、仙骨、尾骨、大腿骨の大転子上の褥瘡のポケット形成率が高い事実からも明らかにされています。
日本における褥瘡の治療では、内科医あるいは皮膚科医、薬剤師と看護師から成るチームによって行われてきました。
しかしながら、薬剤師の介入による褥瘡治療ではありません。
この調査研究では、局所軟膏治療に薬剤師が介入することにより、「フルタ方法」と呼ばれる、創傷部の組織学的な特性と湿った環境を考慮した褥瘡治療を新しく提案しました。
この研究の狙いは、訓練された薬剤師によって扱われる褥瘡治療の有効性を調査することです。
方法1 褥瘡治療データの収集
この調査は、日本の37病院と5つの調剤薬局からのデータ収集に基づき、病院及び調剤薬局で褥瘡治療に関わる薬剤師が「褥瘡治療薬情報のメーリングリスト」を通して参加を依頼し、「古田法」に基づく褥瘡治療のための研修を受けてもらいました。
褥瘡を治療する「古田法」では、医師、薬剤師、看護師、および他の医療スタッフからなる褥瘡治療チームに適切な基準を設定しました。
方法2 コンプライアンス調査(古田法遵守調査) ・・・・・古田法による褥瘡治療を規定通り行ったかどうかの調査という意味です。
「古田法」と呼ばれる褥瘡局所軟膏療法に対する薬剤師介入のガイドラインについて、10項目の質問を行ないました。
1.週に1回以上褥瘡治療をしていますか?
2.褥瘡の創傷を評価ているか?
3.軟膏基材の特性を評価しているか?
4.創傷表面の湿気を評価し、Expert Furuta Blend軟膏を使用するか?
5.創傷の物理的性質を評価するか?
6.あなたは傷の固定を使って傷を治療しますか?
7.あなたは傷の表面と縁を評価しますか?
8.外力による肉芽組織の変形を評価することによって創傷の水分を制御しますか?
9.創傷に適用された外力を評価し、創傷固定によって治療するか?
10.真皮、皮下組織、筋膜などの残存組織を評価していますか?
このアンケートは、「はい(1点)」または「いいえ(0点)」と回答して完了しました。
このアンケートは、患者をコンプライアンス(8点以上)と非コンプライアンス(8点未満)のグループに割り当てるシングルブラインド方式でした。
<用語説明> シングルブラインド方式:新薬の治療効果・有効性を確かめるための比較試験の一種で、一般には、医師の側は知っていて被験者側のみ治験薬の中身を知らされずに行われる試験手法である(逆もあり得る)。単純盲検試験、単盲検試験ともいわれる。
方法3 古田法に沿った褥瘡治療を受けた患者さん
2010年8月から2014年7月の間に継続して褥瘡治療を受けた888人の患者がこの研究で研究の参加者とされました(下の図1)。
次の基準を満たす患者のみが含まれています。
(a)褥瘡の診断基準:DESIGN-Rで、≧d2 (後述)と評価された患者。
(b)観察期間中に7日間以上、褥瘡治療チームからの介入を受けた患者。
上記の888人の中で、年齢、性別、ヘモグロビン、血清アルブミン、褥瘡部位、褥瘡の重症度評価であるDESIGN-Rスコア、及び観察期間のデータに関する情報が欠けている患者はこの調査研究から除外した。
その結果、合計868人の患者が対象とされ、患者の平均年齢は80.0±11.3歳(標準偏差)であった。
上記のグループ分けに関する説明は次回とさせて頂きます。