床ずれ (9)古田法遵守による褥瘡治療評価2
床ずれ (9)古田法遵守による褥瘡治療評価2
前回の「(8)古田法遵守による褥瘡治療評価1」では、調査研究の方法についての説明だけで終わりましたので、今回は、超背結果の一部をご紹介させて頂きます。
タイトル:Active topical therapy by “Furuta method” for effective pressure ulcer treatment: a retrospective study
訳:「効果的な褥瘡治療のための「古田法」による局所療法:後ろ向き研究」
研究者:Katsunori Furuta, Fumihiro Mizokami, Hitoshi Sasaki, and Masato Yasuhara
研究機関:Department of Clinical Research and Development, National Center for Geriatrics and Gerontology, 7-430 Morioka-cho, Obu, Aichi 474-8511 Japan Department of Pharmacy, National Center for Geriatrics and Gerontology, Obu, Japan
公表雑誌:J Pharm Health Care Sci. 2015; 1: 21. Published online 2015 Jul 16. doi: 10.1186/s40780-015-0021-8
なお、下記の方法2と方法3は、「(8)古田法遵守による褥瘡治療評価1」ですでにご説明してますので小さく表示します。
方法2 コンプライアンス調査(古田法遵守調査) ・・・・・古田法による褥瘡治療を規定通り行ったかどうかの調査という意味です。
「古田法」と呼ばれる褥瘡局所軟膏療法に対する薬剤師介入のガイドラインについて、10項目の質問を行った。
1.週に1回以上褥瘡治療をしていますか?
2.褥瘡の創傷を評価ているか?
3.軟膏基材の特性を評価しているか?
4.創傷表面の湿気を評価し、Expert Furuta Blend軟膏を使用するか?
5.創傷の物理的性質を評価するか?
6.あなたは傷の固定を使って傷を治療しますか?
7.あなたは傷の表面と縁を評価しますか?
8.外力による肉芽組織の変形を評価することによって創傷の水分を制御しますか?
9.創傷に適用された外力を評価し、創傷固定によって治療するか?
10.真皮、皮下組織、筋膜などの残存組織を評価していますか?
このアンケートは、「はい」(1点)または「いいえ(0点)」と回答して完了しました。 このアンケートは、患者をコンプライアンス(8点以上)と非コンプライアンス(8点未満)のグループに割り当てるシングルブラインド方式でした。
方法3 古田法に沿った褥瘡治療を受けた患者さん
2010年8月から2014年7月の間に日本で継続して褥瘡治療を受けた888人の患者がこの研究で研究対象とされた(図1)。
次の基準を満たす患者のみが含まれていた
(a)褥瘡の診断基準DESIGN-Rで、≧d2 と評価された患者(ここで、「d2」とは、真皮までの損傷を意味します)。
(b)観察期間中に7日間以上褥瘡治療チームからの介入を受けた患者。
上記の888人の中で、年齢、性別、ヘモグロビン、血清アルブミン、褥瘡部位、褥瘡の重症度評価であるDESIGN-Rスコア、及び観察期間のデータに関する情報が欠けている患者はこの調査研究から除外した。
その結果、合計868人の患者が対象とされ、患者の平均年齢は80.0±11.3歳(標準偏差)であった。
結果1 褥瘡の深さによる評価で被験者をグループに分けた
2010年8月~2014年7月の間、日本で褥瘡治療を受けた 合計888人の治療継続患者(17~102歳)を対象としました(上の図1)。
この図1に示された886人のち、調査に必要なデータが揃った患者は、868人でした。
この868人を赤、青、紫、黒の四角で囲まれたグループに分けていますが、そのグループ分けの基準は、DESIGN-Rの褥瘡評価中の「褥瘡の深さ」によって分けています。
褥瘡内の一番深い部分を評価、あるいは治療に伴い創底が浅くなった場合には深さを再評価し、下の表の「d0~DU」の7つの区分に沿って患者さんの褥瘡の深さを評価しています。
なお,Uは判定不能(unstageable)の頭文字です。
<Depth(深さ)=d2> ・・・d2の評価とは、上の表の通り、真皮までの損傷のある褥瘡です。上の図1では赤色四角のグループです。
図1の3段目左端に赤色の四角で示されているように、DESIGN-Rを使った褥瘡治療評価で、次の様な「深さ(Depth)がd2」の評価をさらに二つのグループに分けました。
二つのグループとは、上の「方法2 コンプライアンス調査(古田法遵守調査)」による評価で、10項目の内、
8項目以上の褥瘡管理が行われた場合をコンプライアンス群(古田法遵守群)とし、
8項目未満の場合を非コンプライアンス群(非遵守群)としました。
(1)遵守群の被験者数 n=154人。・・・これは上の「コンプライアンス調査」に基づくグループ分けです。
(2)非遵守群の被験者数 n=189人。 ・・・・この2つの被験者数を上の図1(赤色四角内にも示されていますので)でご確認下さい。
<Depth=D3 ・・・・皮下組織までの損傷> ・・・図1では水色四角のグループです。
(1)遵守群 n=130 (2)非遵守群 n=90
<Depth=D4,5 ・・皮下組織を越える損傷、関節腔、体腔に至る損傷> ・・・図1では紫色の四角のグループです。
(1)遵守群 n=104 (2)非遵守群 n=55
<Depth=DU ・・・・深さ判定が不能の場合> ・・・図1では、中段右端のグループです。
(1)遵守群 n=59 (2)非遵守群 n=87
次回は、褥瘡の深さで、上の4群に分類した被険者グループ間のバラツキを検証する箇所をご説明します。