恐ろしくも不確かな数字
恐ろしくも不確かな数字
下記の内容は2012年8月17日に掲載し内容をそのまま2013年8月に再掲載したものです。
2012年のクリニックの短い夏休みは終わってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
すでに仕事に就いている人もいれば、まだ休みを満喫されている方もいらっしゃる事と思います。不安定な気圧配置が続き、時折雨も降り、蒸し暑さは格別です。
そこで今日は、夏の合間の「怪談」ではありませんが、少々「不確かで恐ろしい数字」について独断で考えてみたいと思います。
地震・雷・火事・親父と言えば、恐ろしい物の代名詞になっています。
この「ことわざ」について、この時期なので、根拠の不確かな数字であってもあえて比較してみたいと思います。
(A) 第二次大戦の国別死者数
タイムズ・アトラス 第二次世界大戦歴史地図 コンパクト版 を引用している
社会実情データ図録によれば、
日本人の軍人 230万人、民間人80万人の合計310万人との数字が、8月15日の「全国戦没者追悼式」で歴代総理は、三百十万の犠牲者があったと述べています。
また、毎年8月15日には、天皇陛下もこの数字を述べています。
(B) 被災者の比較
第二次世界大戦で亡くなった日本人は310万人。
広島の原爆で28万、長崎で15万人の犠牲者を生んだとされています。
2011年3月11日の東日本大震災では、約2万人の方々が亡くなられました。
いずれも大きな被害に違いがないのですが、第二次大戦と原爆により亡くなった方々は、人災による被災者です。
他方、東日本大震災は、一部人災との指摘もありますが、自然災害と仮定して話を進めます。
要は、被害の大きさから見る限り、自然災害よりも人災の方が遙かに、そして桁違いに大きいことが指摘されます。
戦争の被害者は、日本人だけでなく関係した他国にも多数出ており、その総数は3千万とも5千万とも言われています。
(C) 世の中で最も恐ろしいものとは
何が恐ろしいかという事になると、「人間が最も恐ろしい存在である。」と言うことは歴史が示している現実ではないでしょうか。
防災と言う場合、多くは自然災害に対する準備対処を意味していますが、歴史に刻まれている最も危険な存在は、「人間」であると結論付けられます。
戦争も原爆も科学技術の進歩と共に、武器の殺傷能力も高まってしまいました。
「絆」と叫びつつ、宮城・岩手のがれきさえ、受け入れようとしない現実があります。
「いじめ」がありながら、教育現場で見過ごされています。
故事で言うところの「地震・雷・火事・親父」は、「自身(人)・雷・火事・親父」と言い換えると現実味が増すというのでは、悲しくも情けないことです。
科学や技術が進歩し、高度化している現在の社会では、子供の頃から勉強することは一般的には良い子の見本のように思われがちです。
しかし、人と人の争いや国と国との紛争、民族間や人種間の争いの方が、自然災害よりも多くの犠牲者を生み出してきました。
自然や宇宙などを相手にしたところで天候や天体の軌道を変えることなどできません。
その前に、最も身近な隣人との争いを防ぐ防災、あるいは自分自身を制御し、周囲の人達が争っていれば、仲裁し、争いを防ぐ教育が何よりも優先される必要があるように思います。
(D) 不確かな数字
ここで「不確かな数字」と書いた理由は、数値の根拠となる資料の確かさを確認できないからです。
国や公的機関が発表した数字が信頼できるという保証はありません。
国は自国にとって不利となる場合、評価数値を小さく発表します。本当の被害者数、犠牲者数は、「不確か」と言うよりも「明らかにしたくない」と考えるからではないでしょうか。
例えば、厚生労働省の「戦没者慰霊事業の実施」 ページの中段にある「海外戦没者遺骨の御帰還状況」 によれば、
「未帰還遺骨概数」113万柱は、
海外戦没者数240万柱に含まれています。
しかし、これに沖縄戦における日本兵の犠牲者数は15万人 とされています。
(以前のリンク先が切れたため、数値は異なっています。2020.8.6)
つまり日本兵の総犠牲者数は255万人(海外戦没者240万人+沖縄戦15万人)となり、上の(A)で示した230万人とは異なります。防衛省の資料にも詳細はありません。
従軍慰安婦問題や沖縄戦における日本軍の沖縄市民に対する自決命令など都合の悪い資料は、これまで公開されていません。
当然、上記に示した230万人は、かなり圧縮された数字である可能性が指摘されています。
この数字が増えれば増えるほど、当時の国の指導者の責任はより大きく評価されることから、真実はウヤムヤにして明らかにしたくないのではないでしょうか。
加えて、沖縄戦での住民の犠牲者数は国の調査が行われておらず正確な数は不明です。
それでも、沖縄県援護課の発表では、9万4千人とされています。
しかし、この9万4千人についても諸説あり、歴史教科書の検定でもこの数字にはかなりの幅(12万2千人)があります。
(E) 戦争になれば2~3万人の犠牲者数の差など構ってられないのでは?
この差は、東日本大震災の犠牲者数約2万人を越える2万8千人もの差があるにも関わらず、詳細な調査を行っていない事自体に疑問を覚えないでしょうか。
つまりこの国は戦争になれば、犠牲者数に2~3万人の差があっても無視を続けるほど残酷な国であっただけでなく、戦後もその残虐性を引きずっている事にならないでしょうか。
沖縄戦に関しては、自国内での調査が不可能という理由は見あたらないはずです。
<関連情報>
オバマ大統領は被爆地広島を訪問したが(2016年7月13日)